著者
伊藤 公夫 若井 暁 鶴丸 博人 飯野 隆夫 森 浩二 内山 拓 三木 理 原山 重明
出版者
Japan Society of Corrosion Engineering
雑誌
材料と環境 : zairyo-to-kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.402-410, 2011-09-15
被引用文献数
1 4

嫌気性条件(N<sub>2</sub>(80%)+CO<sub>2</sub>(20%))の海水培地において,金属鉄を電子供与体として,CO<sub>2</sub>を電子受容体かつ炭素源として利用可能なMPAは,純鉄試験片を腐食した.主要な腐食生成物はFeCO<sub>3</sub>であった.このMPAが,同様に金属鉄を電子供与体として利用可能なSRBと共存することで,MPA単独の場合よりも腐食が約2.3倍促進されることが明らかになった.MPAとSRBが共存する場合の腐食生成物も,MPA単独による腐食生成物と同様にFeCO<sub>3</sub>であった.<br>また,嫌気性条件(N<sub>2</sub>(80%)+CO<sub>2</sub>(20%))での腐食速度と,引き続く好気性条件(空気下)での腐食速度を比較した結果,MPA単独,あるいは,MPAとSRBが共存する場合の腐食速度は,嫌気性条件(N<sub>2</sub>(80%)+CO<sub>2</sub>(20%))の方が高い値となった.<br>本研究で腐食試験に使用したMPAとSRBは同一の原油タンクのスラッジから単離されたものである.油井など高濃度のCO<sub>2</sub>とCl<sup>−</sup>が存在する実際の嫌気性腐食環境においては,金属鉄を電子供与体として,CO<sub>2</sub>を電子受容体や炭素源として利用可能なMPAと同じく金属鉄を電子供与体として利用可能なSRBが共存している可能性も想定される.したがって,金属鉄を電子供与体として利用可能なMPAとSRBの共存による微生物腐食に対しても留意すべきと考えられる.