- 著者
-
中川 雅晴
- 出版者
- Japan Society of Corrosion Engineering
- 雑誌
- Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.3, pp.112-117, 2004-03-15 (Released:2011-12-15)
- 参考文献数
- 24
- 被引用文献数
-
5
3
現在, チタン製の口腔インプラントや歯科修復物の臨床応用が増加しているが, う蝕予防のために多用されるフッ素によってチタンやチタン合金が腐食することが問題となっている. 本研究では, フッ素含有環境における純チタン, Ti-6Al-4V, Ti-6Al-7Nb合金および新しく試作したTi-(0.1~2.0)wt%Pt (またはPd) 合金の腐食挙動を動電位分極測定, 腐食電位測定によって検討した. また試験溶液に浸漬する前と後の試料表面のSEM観察を行った. 試験溶液として0.1%および0.2%NaF (それぞれ453および905ppmのフッ素濃度に対応) を含有する人工唾液と溶存酸素濃度が低い人工唾液を用いた. フッ素を含有する酸性環境 (pH 4.0) では, 純チタン, Ti-6Al-4V, Ti-6Al-7Nb合金の試料表面は腐食によって顕著に粗造になったが, Ti-Pt (またはPd) 合金はほとんど影響を受けなかった. 溶存酸素濃度が低い環境では, 市販のハミガキ剤に含まれるフッ素濃度 (フッ素濃度として約1,000ppm) では, Ti-Pt (またはPd) 合金は腐食の影響を全く受けなかったが, 純チタン, Ti-6Al-4V, Ti-6Al-7Nb合金は微視的な腐食によるダメージを受けた. Ti-0.5wt%Pt (またはPd) 合金は, フッ素含有環境でも腐食しない高耐食性を有する新しい歯科用チタン合金として応用が期待される