著者
友田 勇 石田 卓夫 新井 敏郎 鷲巣 月美
出版者
日本獣医畜産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

競争馬,種牡馬,種牝馬,未調教2歳馬の赤血球におけるグルコーストランスポート活性と解糖酵素活性を比較した.血糖値およびインスリン値は各群間で差はなかった.グルコーストランスポート活性,ヘキソキナーゼ(HK),ピルビン酸キナーゼ(PK),グルコース-6ーリン酸でヒドロゲナーゼ(G6PD)活性については種牡馬,種牝馬,未調教馬群の間に特に差はなかったが,調教を積んでいる競争馬ではグルコーストランスポート活性は平均5.8nmol/min/mg proteinであり,他の群の値の2倍以上,HK,PK活性も2-3倍と著しく増加していた.競争馬のG6PD活性は他の群のそれに比べ若干増加傾向が認められたが,有意な差はなかった.以上のように調教を積んでいる競争馬では血糖値,インスリン値などはとくに変化しないにも関わらず,赤血球のグルコーストランスポート活性および解糖系酵素活性が未調教馬に比べ,著しく増加していることが明らかとなった.これは調教に伴う基礎代謝の亢進によりグルコース利用が高まっていることを反映したものと推察された.犬の正常な乳腺細胞と乳腺腫瘍細胞におけるグルコーストランスポート活性およびサイトソル酵素活性を比較した.乳腺腫瘍細胞のグルコーストランスポート活性は正常乳腺細胞の約2倍,腫瘍細胞のHK,PK活性は正常細胞の3-4倍,乳酸脱水素酵素(LDH)は約2倍であった.これらのことから,乳腺腫瘍細胞ではグルコースの取り込みやその利用が正常乳腺細胞に比べ著しく亢進していることが明らかとなった.また,悪性度の高い腫瘍では,LDHアイソザイムのV型活性が優位になる傾向が認められた.GLUT1のC末端の15アミノ酸残基の合成ペプチドでウサギを免疫し,抗GLUT1抗体を作製した.この抗体を用い,ヒト,犬,猫,豚,馬,牛,羊の赤血球膜に存在しているGLUT1の検出を試みたところ,全動物種にGLUT1抗体と特異的に反応するバンドが認められた.