著者
石田 裕
出版者
東京農業大学短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

結果:市販の乳化型被膜剤を用いてイマザリル(IMZ)とチアベンダゾール(TBZ)を展着させた物を試料とした。じゃが芋では、展着風乾後の皮の部分にIMZ47ppm,TBZ93ppm、身の部分にIMZ0.6ppm,TBZ0.8ppm、更に水洗浄(振盪5分)後は、それぞれ45ppm,65ppm,1.2ppm,1.3ppm、洗浄・蒸し調理30分後は30ppm,16ppm,0.6ppm,1.5ppm、洗浄・ラップ包装電子レンジ調理(500W、4分)後は25ppm,30ppm,0.4ppm,1.8ppmが検出された。又洗浄後クシ型に8分割し、揚げ調理(180℃3分)を行なったものは、それぞれ4.8ppm,16.4ppm,0.2ppm,0.4ppmが検出された。この結果から、1.洗浄での除去率は低いが、内部への浸透が若干高まる。2.蒸し調理と電子レンジ調理では同様の傾向が見られ、これはラップ包装により、蒸し加熱と同様の効果が起る為と考えられる。3.揚げ調理ではIMZでは約1/10に,TBZは約1/4に減少し、原因として高温(180℃)加熱による分解あるいは揮散と、揚げ油への溶出が考えられた。4.油中の絶対量と、じゃが芋に残存する絶対量について測定を行なった結果、IMZは芋中の残存料とほぼ同量が、TBZは約1/2量が油中に検出され、油への移行が認められた。しかし初期の展着量からみると油中と芋中の量を合わせてIMZは約1/5、TBZは約1/2.5であり、損失部分が多くを占めた。人参についてもじゃが芋と同様の傾向がみられたが、皮がじゃが芋に較べ軟弱であることから、内部への浸透がやや大きかった。レモンについては果皮が強固で厚みがあることから、内部への進入は殆どみられず、IMZ、TBZのいずれも、身では0.1ppm以下であった。しかし皮には水洗後もIMZ7.2ppm,TBZ16ppmが検出され、単なる水洗浄では除去効果が殆どみられなかった。またマーマレードの作成において、出来上り時のIMZとTBZの濃度はいずれも1.0ppmで、展着時の1/10および1/20程度と低い含有を示し、煮沸後の水さらしとpH4前後での煮熟が、残存量の低下に関与することが示唆された。
著者
高井 良尋 山田 章吾
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

現在までに低線量全身(ないし体幹)照射(low dose total body(or trunk)irradiation:以下L-TBI)が行われた症例は89例となり、ある程度症例が集積されたためL-TBIの適応症例の検討が可能となった。89例の内訳は非ホジキンリンパ腫50例(うち32例は新鮮症例)、固形腫瘍などが39例である。L-TBI単独の抗腫瘍効果が評価できるL-TBI先行例(局所照射後でも転移巣などの評価可能病巣のある症例も含む)は非ホジキンリンパ腫新鮮症例13例、再燃症例13例、固形腫瘍など17例であった。奏効率はそれぞれ85%,23%,18%であり、非ホジキンリンパ腫新鮮例に対してはきわめて良好であったが、再燃例や、固形腫瘍などはL-TBI単独での効果は期待できない結果となっている。固形腫瘍などPR3例のうち2例はリンパ系腫瘍のホジキンリンパ腫2例であり、真の固形癌ではL-TBI単独ではほとんど抗腫瘍効果はないと思われる。非ホジキンリンパ腫再燃例では、以前に根治的な化学療法の行われていない、免疫機構の荒廃していない症例でのみL-TBI単独の効果が認められており、2,3次以上の再燃例で化学療法が何度も行われていた症例ではすべてNCかPDであり、L-TBI単独の効果は期待できない。非ホジキンリンパ腫の新鮮例に対しては極めて有効で、局所照射と化学療法の上にL-TBIをアジュバンドとして使用したI,II期患者の5年生存率は、histrical control群に比し有意に有効であった。固形癌では新鮮例の局所照射と併用することにより局所制御率向上と遠隔転移抑制に期待できるがこれに対する答えはこの3年間では出せない。今後の課題である。末梢血リンパ球サブセット分画の解析ではヘルパーT、ヘルパーインデューサーT細胞分画に有意な増加またサプレッサーT細胞の有意傾向のある減少を認めたことよりL-TBIの抗腫瘍効果の一つは細胞性免疫の賦活効果であることは間違いない。体幹部照射で鼻腔原発のリンパ腫がCRとなった症例を認めたことは特筆に値する。
著者
柳本 武美 安楽 和夫
出版者
統計数理研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

代表者の提案した障害的残差尤度の概念が実際的にAncillaryの概念より有用であることを検証している。本年特に重点的に研究を行ったのはGamma分布の母数の推定の場合である。Gamma分布は正の分布として代表的であるが、驚くべきことにその母数の推定については良く調べられていない。計算手段の向上にともなって推定法の改良が意義のあるものになっている。多くのシミレーションを通して研究した。周辺尤度を用いる方法については共同研究の遂行を行ったが初期の成果を上げることはできなかった。継続研究として次年度に成果を得るべく努力中である。しかしながらこの研究との関連において山本英二氏(岡山理大)とベータ2項ロジスティックモデルについて1つの結果を得ることができた。更に他の分布における推定においても条件付最尤法の良さについての研究を行った。この場合推定量の良さを何で捉えるが問題となる。統計推論の基礎としての規準についての研究と実際の推定量の良さの研究を平行して研究している。安楽は分割表において母数を多く含む場合に、尤度法の近似として得られる検定量を提案し、その比較を行った。
著者
相蘇 一弘
出版者
大阪市立博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

江戸時代ほぼ六十年を周期に起きたお蔭参り、文政13年(1830)のお蔭参りのなかから起きたお蔭踊り、慶応3年(1867)に全国規模で起きた「ええじゃないか」の乱舞については、伊勢信仰と密接な関係があることから一連の研究テーマとしてとりあげられることが多かった。一方、近世にはお蔭踊りや「ええじゃないか」と同じ様な踊りを伴う民衆行動として、天保2年(1831)大坂の御救大浚や同9年(1838)の大坂天満宮の砂持を初めとする砂持・正遷宮、同10年の京都豊年踊り(蝶々踊り)などがある。これらの踊りにはさまざまな仮装を伴う場合が多く、その様相は場所や時代が違う場合でも驚くほどよく似ているケースが多い。これらの踊りが発生した背景としては、凶作・飢餓・社会不安など悪い状態から脱出した時期という様な共通性のある場合もあるがない場合もある。またある踊りが他の踊りの流行に影響を与えた場合もあるし、そうでない場合もある。これは、近世後期の上方では何かきっかけがあれば、どこでも同じような形で仮装を伴うような踊りに熱狂し得る共通の素地があったことを意味するものではないだろうか。これら民衆の熱狂は時代や地域、形の異なる場合であってもその底に流れるものは本質的には同じものと考えられる。これらの民衆運動は封建制度に抑圧された人々が得たつかの間の非日常的世界、という点で共通しており、彼らは潜在的に抱いていた解放の願いを集団的な熱狂という手段で一時的に昇華させたのであった。なお、これらの民衆踊りは過去の日常的な生活のさまざまな伝統が持ち出されたものであり、とくに大坂では遊里文化が色濃く影響していると見られる。
著者
山森 邦夫
出版者
北里大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

フグ毒(TTX)や麻痺性貝毒(STX)は強力な神経毒であるが, ヒトにとっては無味・無臭であるといわれている. 一方カナダ産のニジマスやキョクイワナの味覚器はTTXやSTXに応答し, しかも両毒に対する応答性は両魚種が近縁であるにもかかわらず, かなり異なった. このことは, 魚類が餌料中の毒の存在を味覚によって感知可能であり, しかもその感知能力は魚種によって異なることを示唆している. そこでサケ科の3魚種, ニジマス, イワナ, ヤマメおよび海産魚, クロソイの各味覚器のTTX, STXに対する応答性を調べた. また両毒の魚毒性や両毒を含有する餌料に対するこれらの魚種の摂餌行動を調べ, 味覚との関連性を検討した. 成果は以下の通りである. 1.サケ科3魚種の味覚器はTTXに応答した. TTXに対する応答閾濃度はイワナが最も低く(10^<-7>M), ついでヤマメ, ニジマスの順であった. 上記3魚種はSTXにも応答したが, 各魚種ともTTXの場合に比較して応答は小さく, また応答閾濃度も高かった. 一方, クロソイは5x10^<-4>MのTTXに応答しなかったが, 10^<-〓>M以上のSTXに応答した. 2.サケ科3魚種ともTTX含有餌料を忌避した. 半数が忌避する餌料中のTTX濃度は, 応答閾濃度の約100倍に相当し, イワナで最も低く(10^<-5>M), ついでヤマメ, ニジマスの順であった. 一方, 上記3魚種は, 10^<-4>M以下の濃度のSTXを含む餌料を忌避しなかった. 3.経口投与時の半数致死毒量はTTXの場合は, イワナ, ヤマメでは300MU/20g前後, ニジマスでは300〜600MU/20g以上と異なり, STXの場合は, 3魚種とも150MU/20g以上であったが, 決定まで至らなかった. 4.以上から, 毒に対する味覚応答性は魚種や系統によって異なることが示唆され, また毒に対する味覚や毒に対する抵抗性と忌避行動の生ずる濃度との間に相関性のみられることが示唆された.
著者
小池 健一 上條 岳彦 菊地 俊実 北原 文徳 藪原 明彦
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

チェルノブイリ原発事故後、ベラル-シ共和国の小児に甲状腺癌が高率に発生していることが報告されたが、細胞障害性T細胞、NK細胞活性などの腫瘍免疫能や造血能を調査した報告はない。そこで、われわれは^<137>Cs高汚染地域であるベラル-シ共和国ゴメリ州チェチェルスク地区の小児と非汚染地域であるボブルイスク市の小児について、それぞれの保健局、病院と連携して血液免疫学的検査、造血能および体内被曝量の測定を行い、これらの異常と放射線被曝との関連などを検討した。^<137>Cs高汚染地域に住む小児は白血球数、Hb値、血小板数、血液像には異常はなく、生化学所見も正常範囲内にあった。CD2、CD3、CD4、CD16陽性細胞の百分率は日本の同年齢の小児と同等あるいは高値を示した。一方、CD8、CD56陽性細胞の百分率およびCD4/CD8比は同等であった。また、免疫グロブリン、補体やPHA、ConAによるリンパ球幼若化反応も正常であった。K562細胞を標的細胞としてNK細胞活性を比較すると非汚染地域に住む小児は日本の小児とほぼ同等であったのに対して、高汚染地域に住む小児の約30%に機能異常(亢進あるいは低値)が認められた。しかし、^<137>Cs体内被曝量とNK細胞活性あるいはNK細胞数との間には相関は認められなかった。以上から、放射能汚染地域に住む小児には腫瘍免疫能特にNK細胞活性の異常がみられることが判明した。現在、放射能汚染地域に住む小児は行政上できるだけ食物により汚染されないように配慮されていることからNK細胞活性の異常が放射能被曝によるものなのかを明らかにするには成人を対象とする検討が必要である。
著者
村田 容常 本間 清一
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

リンゴを切ると褐変することはよく知られた現象で、酵素的褐変の典型例である。これは、リンゴ細胞中のポリフェノール類がポリフェノールオキシダーゼ(PPO)により酸化されキノン体となり、それがさらに重合するためと考えられている。リンゴPPOは、我々により1992年に初めて単離された。抗PPO抗体を調整し、PPOのリンゴ組織内分布を検討したところ、PPOはリンゴ果実の中心付近(種子の回り)に局在することがわかり、これが褐変部位と一致した。このようにリンゴPPOは、リンゴの褐変に中心的役割をはたすが、構造と活性の詳細は未詳であり、また、その発現を制御することにより褐変をコントロールすることも試みられていない。そこで申請者は、まずリンゴPPO遺伝子をクローニングし、その構造を明らかにすることとした。リンゴPPOをコードすると予想されるプライマーを用い、PCR法によりゲノムDNAを増輻した。その結果、PPO遺伝子と思われるバンドが検出された。増輻断片をpBluescriptに組み込み、大腸菌に導入した。得られた十数個のコロニーの遺伝子を調べたところ2個のPPO遺伝子を得ることができた。各々をシークエンスし、全塩基配列を決定し、アミノ酸配列に翻訳した。その結果、リンゴPPO遺伝子にはイントロンがないこと、シグナルシークエンスよりPPOタンパク質はプラスチドへ輸送されること、銅2分子が結合すると予想される保存性の高い2つの活性中心領域(Cu-A、Cu-B)が存在すること等が明らかとなった。さらに本遺伝子の大腸菌中での発現に成功した。発現タンパク質はPPO活性を有し、かつ抗リンゴPPO抗体と反応した。
著者
横田 耕一
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.「法人」の「人権」主体性は最高裁判所で認められているが、「人権」の未来の趣旨からして、「法人」には「人権」は認めるべきでなく、仮に認めるとしても、「個人」と同等のものは認めるべきでない。ただ、宗教団体(教会)が信教の自由の主体であるとの説については、検討課題として残されている。2.労働組合の「団結権」は、組合という「集団」の「権利」としては、認めるべきであるが、これを労働組合の「人権」として認めることは労働者「個人」の「人権」を抑制することになりがちであるので賛成できない。3.アファーマティヴ・アクションは、「集団」に「人権」を保障したものではなく、特定の「集団」に属する「個人」に対して特別の「実質的平等」を保障したものとして理解すべきである。4.人権・民族などの「集団」に対する名誉毀損、差別表現を法的に規制することは不必要であるばかりか、危険であり、重要な「人権」たる「表現の自由」を侵害するので、行うべきではない。5.「第三世代人権」の一つとして主張されている「平和的生存権」は、国際法上の概念が曖昧であり、「人権」として現段階では認められない。日本国憲法における「平和的生存権」は、「個人」の「人権」と考えるべきであり、それを積極的に認めることには意義がある。6.「発展権」は、それを第三世界諸国が主張する理由は理解できるが、それを「人権」と呼ぶには未だその具体的内容が不明であり、主体もはっきりしないので、せいぜいスローガンないし「発展途上の人権」として理解すべきである。したがって、「発展権」を「集団的人権」といま呼ぶことはできない。
著者
内藤 芳篤 六反田 篤 分部 哲秋 松下 孝幸
出版者
長崎大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1.人骨の発掘収集(1)長崎県対馬の上県郡峰町佐賀貝塚および壱岐の石田町大久保遺跡から合計7体の人骨を発掘収集し, 復原した.(2)対馬佐賀貝塚の縄文人骨および壱岐大久保遺跡の弥生人骨についてマルチン氏の方法により人類学的計測を行なうとともに, 長崎大学および他大学保管の両時代人骨と比較検討した.2.人骨の形質(1)対馬の縄文人骨, 男性における脳頭蓋の長幅示数は80.54で, 短頭型に属していた. 顔面頭蓋では, 上顔高が64mm, 中顔幅が103mmで上顔示数は62.14であった. 歯の咬合は鉗子状咬合であったが, 風習的抜歯は確認できなかった. ピアソン氏の方法による大腿骨からの推定身長は160.83cmであった. 他地方縄文人骨との比較では, 九州本土の縄文人骨と酷似し, 津雲, 関東の縄文人骨とも比較的近似していた.(2)壱岐の弥生人骨, 頭蓋諸径が著しく大きく, 男性における脳頭蓋の長幅指数は79.29で中頭型に属していた. 顔面頭蓋では, 上顔高が72mm, 中顔幅が119mmで, 上顔示数は60.50であった. また鼻根部は陥没し, 縄文人的形態をとどめていた. 歯の咬合は鉗子状咬合で, 右側上顎犬歯に風習的抜歯が認められた. 推定身長は158.20cmであった. 他地方弥生人骨との比較では, 低身・低顔を特徴とする西北九州の弥生人骨と近似し, 長身・高顔を特徴とする北部九州・山口地方の弥生人骨, あるいは朝鮮半島の同時代人骨とは異なっていた.3.今後の方針壱岐・対馬は地理的にみて人類学上きわめて重要な地域であり, 今後さらに人骨資料の収集, 研究につとめたい.
著者
西山 茂
出版者
東洋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

補助金交付期間に得られた研究成果の概要は、以下の通りである。(1)生野区にいる在日韓国・朝鮮人(以下、在日という)の葬儀の約90%が日本仏教寺院で行なわれているが、そうした寺は彼等にとって便宜的な葬儀の場以上の意味をもっていない。また、生野区の日本仏教寺院の82%が在日の葬儀を経験しているが、寺が葬儀を引き受ける動機の多くは経済的なものである。さらに、寺での在日の一般的な葬儀の形態は儒教式(韓国・朝鮮式)と仏教式(日本式)の折裏である。(2)生野区にいる在日の殆どは、町内会を通して自動的に神社の氏子となって神社への寄付もしているが、役員となって神社の意志決定に参画する機会は殆ど与えられていない。ただし、在日の多くは、初詣や祭りの時に神社に参拝するだけでなく、七五三や結婚式、さらには地鎮祭や上棟式のお祓いなどを神社に依頼したりもする。また、祭礼時の地車曳行や獅子舞いには在日の子弟が数多く参加し、それが大人になっても懐かしいふるさとの思い出となっているという。(3)生野区には比較的多くの在日信者を含む創価学会(推定で3300名前後)、崇教真光(推定で1000名前後)、天理教(140名)などの新宗教がある。これらの新宗教の在日信者の割合は、創価学会と崇教真光が約三分の一、天理教の場合は2.5%である。また、切宗教諸教団のなかでは比較的歴史の浅い新宗教のほうが在日の信者が多く、同一の新宗教教団のなかでは指導者が在日で信者のなかにも多くの在日があるような教会などに在日の信者が集中する傾向がある。
著者
宮澤 啓輔
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

瀬戸内海産下等底生動物におけるフグ毒(tetrodotoxin、TTXと略記)の分布起源、蓄積機構を解明する目的で、実験を行ない、以下の諸結果を得た。すでに他地域と同様、TTXの保有を確認した棘皮動物トゲモミジガイ(Astropecten polyacanthus)の毒性調査の結果、季節変動では生殖期に高毒性を示すこと、体内分布では卵巣の毒性が著しく高い(最高12700MU^^ー/g)こと等を認めた。また筆者らがすでにTTXによる毒化を確認している扁形動物オオツノヒラムシ(Planocera multitentaculata)では、成熟卵を含む輸卵管の毒性が高く、消化管がこれに次ぐことを認めた。さらにオオツノヒラムシの産出卵の毒性は極めて高く、最高10700MU^^ー/gに達し、親のwhole bodyの毒性の数10倍を示した。またトゲモミジガイでは卵巣の毒性が高いため、whole bodyの平均毒性で、雌は雄の約2.5倍を示した。このように卵巣あるいは卵の毒性が高いことは、フグやカリフォルニアイモリと同様、TTXが生体防御物質として存在する可能性を示唆した。次にオオツノヒラムシ消化管から、かなり強力なTTX産生能をもつ細菌、Vibrio sp.を分離し、これがヒラムシのTTXの起源である可能性を示した。また扁形動物と近縁の紐形物動のミドリヒモムシ(Lineus fusroviridis)、クリゲヒモムシ(Tubulanus punctatus)等ヒモムシ類にTTXとその関連物質の存在を初めて確認し、TTXの分布を紐形動物に拡大した。またヒモムシ類の部位別TTX含量を調べた結果、吻が最も高濃度であることを認めた。吻に高濃度のTTXを持つことは、TTXを餌動物の捕獲、敵からの防御の手段として使っている可能性がある。この外、環形動物のウロコムシ(Lepidonotus sp.)や腔腸動物のイソギンチャク(Actirua sp.)等にも初めてTTXを検出した。
著者
兼田 繁
出版者
福島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究では、わが国最大の原発集中立地地域である福島県浜通り地方を対象として、原発立地による地域社会の変動を、地元各自治体の対応経過、住民生活と住民意識の変化、住民運動の形成・展開過程を中心に、実証的に明らかにしようとした。そのために、数次にわたる地元自治体、原発関連諸機関、住民運動リ-ダ-、住民各層に対する聞き取り調査及び楢葉町住民を対象としたアンケ-ト調査を実施した。また、最近の東北地方における地域振興と原発関連施設立地をめぐる問題状況を把握するために、青森県下北半島の核燃料サイクル施設、岩手県釜石市の核廃棄物地下実験施設、宮城県女川町の原発増設に関する動行について、現地視察を実施した。さらに福島第2原発事故をめぐる新聞報道や原発推進政策及び全国各地での原発立地をめぐる住民の動きに関するテレビ等の特集番組の収集を行った。これらの調査分析から、1.原発関連施設の誘致の理由として、地域の側から共通して挙げられているのが、出稼ぎの解消など、過疎脱却の地域振興への期待であること、2.原発立地による地域振興への地元自治体の過大な期待が原発の安全性確保のマイナス要因となっていること、3.原発立地後の住民運動が、誘致段階に比べて停滞する傾向があり、原子力行政の民主化が進んでいないこと、4.市町村民所得の向上や電源三法による自治体財政規模の増大が住民生活の豊かさに直結していないこと、5.原発立地による経済効果が建設段階を中心に一過的であるうえに地域産業の主体条件を急速に堀崩しているために、自立的な地域振興が困難となっていること、等が明らかになっている。以上は、これまでの国家プロジェクト及び大企業依存型の地域振興に共通する側面をもっており、今後この点での比較研究が課題である。
著者
蘆田 徹郎
出版者
熊本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

今年度(最終年度)は、平成3年度(初年度)の実績(昭和天皇の重態と死去に際しての祭りやイベントの「自粛」をめぐるマスコミ資料の収集、博多山笠・長崎くんち・唐津くんち等九州地域の比較的大規模な都市の祭りについての文献資料の収集、熊本県下の「村おこし」における祭りやイベントの位置づけについての行政資料の収集といくらかの観察調査)を踏まえ、収集資料の整理・分析・考察に当てるとともに、現在も大変な賑わいを見せ、昭和天皇の重態に際しても「自粛」をしなかった伝統的な都市の祭礼「間津くんち」に焦点を絞り、今日における祭りの意味と意義についてのかなり綿密な調査研究を集中的に実施した。「唐津くんち」調査では、平成4年8月25日から同30日にかけての祭り関係者からの聞き取り調査と、祭り当日およびその前後(11月1〜5日)にかけての(参与)観察調査によって、詳細なデ-タを手に入れることができた。そのほか、平成5年3月には東京に出張し、全国的な祭り・イベント状況についての情報を収集した。こうした調査研究を通じて、「競争原理」と「合理化」が極限的なまでに進展したはずの現代社会において、たとえ潜在的であれ強烈な「共同性志向」と「非日常性願望」とが確かに存在するという当初の研究仮説を実証できる地平には達することができたと思う。残された課題は、現在の祭りやイベントのブ-ム的状況に顕現している「共同性志向」や「非日常性願望」が、ポスト・モダンが云々される現代日本においていかなる「意味」をもっているのかを確定することである。
著者
塩見 一雄
出版者
東京水産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1.ウナギ体表粘液の抽出物は,マウス静脈投与で強い毒性を示すことを見いだした。毒は著しく不安定で,経口投与では毒性を発現しないことから,食品衛生上の問題はないと判断した。各種クロマトにより電気泳動的に均一な精製毒が得られ,毒は分子量40万の酸性タンパク質で,分子量23万と11万のサブユニットより成ること,Gly,Ala含量が高く,Met,Cys,Tyr,Trp含量の低いことを明らかにした。精製毒のLD_<50>は3.1μg/kgで,毒性のきわめて高いことが注目された。2.ウナギ体表粘液中に少くとも2成分のレクチンの存在を認め,そのうちの1成分を各種クロマトで精製し,分子量4〜5万の酸性タンパク質であることを示した。体表粘液中には溶血因子も検出されるが,クロマト操作中の失活が著しいため精製は断念した。3.ウナギ血清中のタンパク毒を精製し,LD_<50>が670μg/kgの精製標品を得た。毒は分子量15万の酸性タンパク質で,分子量11万と7万のサブユニットで構成されると推定した。4.ウナギ以外の50種魚類について体表粘液毒を検索し,ヨ-ロッパウナギ,ハモ,マアナゴ,ドジョウ,カジカ,クサフグおよびキタマクラの7魚種に検出した。これらの中では,ヨ-ロッパウナギおよびハモの毒性が高く,両魚種の本体はウナギ毒と同様に不安定なタンパク質で,分子量もウナギ毒とほぼ同程度(約40万)であった。5.ウナギ体表粘液から精製した毒でラットを免疫したところ,ウナギ毒の致死活性を強く抑制する抗血清が容易に得られた。ヨ-ロッパウナギ毒およびハモ毒の致死活性も抗血清である程度抑制されることから,両毒とウナギ毒との免疫学的類似性が示唆された。一方,抗血清は,ウナギ血清毒に対しては中和効果を示さず,ウナギ体表粘液および血清中のタンパク毒は,免疫学的にお互いに異なると考えられた。
著者
小林 和男 古田 俊夫 石井 輝秋
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

日本海中央部の大和堆の北西麓、北大和堆との間に存在する断層崖の下部に転在する岩石片を海洋科学技術センターの運航する「しんかい2000」によって採取した。乗船した本研究代表者小林の目視観察およびビデオ記録の解析から、これらの岩石は母船「なつしま」の曵航テレビによって確認された近傍の崖から落下したものであることはほゞまちがいない。採取された7個の岩石(合計約5キログラム)のうち、3個は泥岩であって崖の表層をつくる堆積岩の破片である。あとの4個は密度が大きく、安山岩、デイサイト及び安山岩質玄武岩の熔岩で、日本列島のような島弧または大陸起源の岩石であることがわかった。一方、研究船白鳳丸のKH86-2航海(昭和61年4〜5月)において、大和堆東方の大和海盆中央に位置する拓洋第2海山から多量の火山岩がドレッジにより採取された。その岩石学的性質は現在分担者の1人石井と山下(大学院生)により研究中であるが、海洋中の海山に特有のアルカリ玄武岩であって、大和堆山麓の岩石とは明らかな差異がある。白鳳丸のこの航海では男鹿半島北西沖の日本海盆西翼の磁気異常が詳しく測定され磁気異常縞模様とそれを切る僞断層が同定された。また、拓洋第2海山などの上で測られた磁気異常はかなり大きい。これに対し、大和堆の上で見られる磁気異常はその山体の大きさに比すれば著しく小さく、大和堆をつくる岩石が磁化の小さい安山岩、デイサイト、花崗岩などから成ることを示すと考えられる。大和海盆の磁気異常は日本海盆ほど整列していないので、島弧火成活動が海盆底にまで及んでいると思われる。大和堆は現在の島弧活動が起こるには海溝から遠すぎるので、その火成活動は大和海盆拡大以前(おそらく15Ma以前)であったと思われる。
著者
金子 勝
出版者
法政大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、移民社会を抱えた先進福祉国家と移民を輩出する発展途上国との関係を、財政政策を媒介にして明らかにすることであった。先進国側では、移民社会の出現が、地方自治を通して福祉国家の縮小を促す。福祉的な社会サービスの受給者が移民であるのに対して、その税負担はもっぱら白人ミドル・クラスの財政課税に依存しているために、サービス受益者と税負担者が人種的の分裂してしまうからである。特に英米のようなアングロサクソン系諸国では、こうした傾向が強い。これに対して、南アジア諸国やフィリピンのような途上国では、移民達の送金が構造調整政策を支える役割を果している。1980年代以降貿易・為替政策の自由化や公的部門の縮小をはじめとする経済自由化政策を追求してきた。しかし脆弱な産業構造をもつ途上国では、さまざまな手段を講じて移民送金を引きつけようとするのである。また中国では華僑の投資が経済成長を先導している。このように移民社会の出現は、互いに経済自由化政策を支え合うという関係を作り出すのである。つまり、それは先進国の福祉国家を解体し、途上国では構造調整政策の実行を支える役割を果すのである。しかし、このことは、先進国・途上国の双方で、経済自由化政策に問題がないということを意味していない。先進国側では、マネタリスト的政策の一貫性は失われている。他方、途上国側では、経済自由化政策が外国投資の増加をもたらす反面、地域間格差や貧困問題を悪化させる側面をもっている。特に、地方財政分野では、税構造の歪み・インフラ事業の赤字や資金不足問題が生じており、教育・衛生・社会保障などの支出低下が生じているために、貧困問題の中長期的解決を遅らせているのである。
著者
島田 信夫 河合 隆裕 斉藤 恭司 柏原 正樹 荒木 不二洋 中野 茂男
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究の目的とする多様体、特に複素多様体の幾何学と関連諸問題の研究に関して、複素空間、代数的多様体等の特異点の研究、偏微分方程式の解空間の構造、またそれに対する代数解析的研究、一般コホモロジー論、特に複素コボルディズム論の研究、代数的K-理論の研究、数理物理学的研究等様々の立場からの研究分担者による探求が進められ、多くの新たな成果と進展をみた。以下にその概要を述べる。1.島田はAdamsスペクトル系列の【E_1】-項を与えるラムダ代数の概念を、複素コボルディズム論におけるNovikovスペクトル系列の場合に拡張し、やはりその【E_1】-項を与えるMU-ラムダ代数を構成した。その幾何学的応用は今後の研究課題である。島川は多重圈の概念を活用して代数的K-理論における積構造について圈論的な存在証明を与えた、またそれらの同変理論も研究中である。2.斉藤恭司は正規ウェイト系に対応する孤立特異点をもつ超曲面に対して特異点解消、コンパクト化等の操作により、多くの重要かつ興味ある代数曲面の族を構成し、それらの分類および代数幾何学的特性について詳細な研究を行った。これは斉藤の従前からの一般ウェイト系、特異点、一般Weyl群と不変式論等の研究の進展継続を示す目ざましい成果である。成木は斉藤の仕事に関連して、或種の型の特異点解消に伴う楕円曲面系を簡明に構成した。3.中野,大沢は複素多様体上の或種の増大条件を満す正則函数の拡大に関する結果を得た。また大沢はK'dhler多様体と多変数函数論の研究を進めた。4.柏原,河合はD-が群の研究を進め多くの成果を挙げ、また三輪,神保は代数解析の方法を数理物理学へ適用し成果を得た。5.荒木は2次元Ising模型に対する相関函数の解析性に関する結果を得たまた中西,小嶋は場の理論の研究で成果を得た。その他、研究分担者による微分方程式、無限次元測度の研究がある。
著者
畑山 義弘
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

今回, 殖民軌道の調査をしたことにより次のことが明らかになった. 殖民軌道は, 北海道第1期拓殖計画末期の大正13年に取上げられ, 根室の厚床より標準に至る約80km, 軌間762mmの根室線が最初であった. これを「北海道殖民軌道」と呼んだ. 軌道は国費によって北海道各地に施設され, 36の線が運営された. (昭和2年の第2期拓殖計画では47線, 407km).設置については, 軌道法第32条により特許申請は不要で, 設置する官庁(農林省)が主務大臣と協議してなされていた. しかしこの制度で実施されたのは根室と枝幸の2線だけであった. 昭和20年以降, 北海道緊急開発計画の樹立にともない, 名称を「北海道簡易軌道」と改称し農林省の所管となり, 国有機関車, 軌道の保全のため国が費用を補助していった.また軌道の新, 改良は北海道開発局が担当し, 北海道知事がその管理者となり, 昭和28年からは, 管理運営に関しては, 北海道庁と各町村が委託協定を結び一切の管理運営を各町村が行うようになった. しかし昭和46年3月をもって国の補助(土地改良法による補助)が打ち切られ, また道路網の発達により自動車が急速に普及し, 軌道の利用が減少, 施設の老朽化にともない経営が困難となっていった. このため昭和46年12月, 浜中町営軌道を最後に北海道から消えていった.また今回の調査で軌道の運営と利用について確認されたことは, 当初は利用者が「移住者世話所」に申出て承認を受ければ無償で軌道の使用ができたが, その後計画輸送と自主的管理運営の必要から利用者を組合員とする運行組合に委託, 組合は使用料を徴収して維持費用にあてた. ただし根室線, 枝幸線は軌道法32条により直営運輸線として国が直営していた. この他軌道の営業実績, 地域の変ぼうについては資料の整理分析が終了次第明らかにしてゆきたい.
著者
倉沢 愛子
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

平成6年度の研究を継続させ、平成7年7月-8月と12月にはインドネシアにおもむいて現地での資料収集ならびにインタビュー調査を行った。昨年から整理している、バリ島で教師をしていた一日本人の日記をワープロに入力し、整理する作業は、院生らの協力を得てようやく完成し、その内容分析を行った。さらに、日本占領期に制作されたニュースやドキュメンタリー映画の中に収録されている、日本軍司令官や、スカルノら対日協力者の演説の文言を分析し、日本が具体的にどのような理論で、インドネシアの住民を戦争協力に向けて動員しようとしていたのかを分析した。これらの研究活動と平行して、これまでの研究成果を具体的な形で出した。そのひとつは、終戦50周年を記念して神奈川県湘南セミナーハウスで平成7年11月に三日間にわたって開催された「東南アジア史のなかの日本占領」と題するシンポジウムに参加し、日本のインドネシア占領に関する研究発表を行ったことである。さらにインドネシア独立50周年を記念して平成7年7月11日から14日までインドネシアのジャカルタで開催された"National Revolution:Memories,studies,reflections"と題する国際会議にも出席し、研究発表を行った。その他、本研究テーマに関しいくつかの雑誌論文を刊行した。
著者
森嶋 彌重 伊藤 哲夫 古賀 妙子 近藤 宗平
出版者
近畿大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

チェルノブイリ原発事故が発災災生し、3年を経過した。日本本土のほぼ中央に位置する琵琶湖生態圏における放射性核種の動向および経時変化について観察した。(1)琵琶湖水については、表層水1m^3を採取し、検出された放射性核種は半年後以降Cs-137のみとなり、ほぼ1/10以下で平衡行状態を示し、現在は事故以前の濃度0.2mBq/1に減少した。(2)湖泥のCs-137の深度分布は表層土より10〜20cmで最高値を示し、その濃度は粘土成分の多い所で高く、場所により2倍の変動を示した。このCs-137は、チェルノブイリ原発事故以前の放射性降下物による影響が大きいと思われる。これはチェルノブイリ事故の降下物中のCs-134/Cs-137比が1/2であるが、Cs-134の沈着が少ないことより推測される。(3)琵琶湖に生育している生物には、3年後でもCs-137が検出され、その濃度はブラックバスの肉部で0.5Bq/kgとなり、半年後の最高値2.0Bq/kgに比べ、約25%と経時的に減少している。(4)水草中のCs-137濃度は、夏に低く、冬に高い傾向を示しながら徐々に減少していく。これは冬季は枯れて芽体で越冬し、夏には生長して生物学的希釈を生じるものと思われる。(5)湖水中のCs-137濃度に対する生物中の濃度比を濃縮係数とすると、ブラックバス、モロコ、ブル-ギルは1000〜4000コイ、フナは200〜1000、貝は100〜170と低かった。原発事故などにより放出される核分裂生成物の生態圏への影響を知る上で指標生物としては濃縮係数の大きい生物が望まれるが、ブラックバスなどが有効であると思われる。