著者
古原 洋 内野 彰 渡邊 寛明
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.175-184, 2001-09-28
参考文献数
13
被引用文献数
7

要約:北海道および東北で採取されたスルホニルウレア系除草剤抵抗性イヌホタルイ(Scirpus jun-coides Roxb.var.ohwianus T.Koyama)8集団および感受性6集団の1998年産種子を供試し,15℃および30℃の温度条件,湛水土壌および密栓水中条件下での発芽について検討した。その結果,15℃湛水土壌の低温条件下で,抵抗性イヌホタルイの多くは感受性イヌホタルイよりも発芽率が高く,発芽速度も速やかであった。上記供試イヌホタルイのうち,抵抗性3集団および感受性1集団について,1999年産種子を用いて再試験を実施したところ,1998年産種子と同様の結果が得られたことから,種子の発芽にみられる集団間差異は遺伝的な差異と考えられた。抵抗性および感受性イヌホタルイが混生する現地水田において,発生時期毎にイヌホタルイ実生の抵抗性検定を行った結果,抵抗性個体の発生が感受性個体よりも速やかであり,移植後10日までに大部分の個体が発生を終えていることが明らかとなった。代かき後の雑草発生時期が低温で推移する北海道においては,低温発芽性に優れる抵抗性イヌホタルイの発生は,感受性イヌホタルイよりも速やかである場合が多いと予想される。したがって,抵抗性イヌホタルイ発生水田では,除草剤の処理時期を逸しないように,水稲移植直後より注意深くその発生を観察することが重要であると示唆された。