著者
古島 義雄
出版者
福山大学経済学研究会
雑誌
福山大学経済学論集 (ISSN:02884542)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-26, 2014-03

公表された数値から推計すると、銀行が直接あるいは与信者として関与するシャドーバンキングの規模は10~20兆元であり、15兆元とするとGDPの29%、預金の16%である。シャドーバンキング拡大の第1の背景は2004年から法律が整備され、2007年に導入された自己資本比率規制、BIS規制にある。第2は、金融政策であり、人民元の為替レートを米ドルに実質的に固定する為替政策によって、介入額が大幅に増加し、その財源を準備預金に頼ってきた結果、高率の預金準備を回避するためにも、オフバランス取引が選好された。第3は、資本市場の不振であり、2007年に株価はピークを付けた後、株式の新規発行はほとんど不可能となった。一方、リーマンショック以降の景気刺激策として、地方政府の財政出動が行われ、その資金調達の多くが銀行借り入れによるものと推測される。かくして、すべての当事者にとってオフバランスとすることが有利となり、通常の銀行業務をオフバランス化した結果、シャドーバンキングが急増してきたと推測される。