著者
安達 剛弘 赤尾 恵子 古川 克郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.855-859, 2020 (Released:2020-11-30)
参考文献数
15

症例は67歳,女性.2017年3月に胸腺腫に対して拡大胸腺摘出術が施行された.最終病理結果はtype AB胸腺腫であった.術後1年頃から気道感染症状を繰り返していたが2019年2月に肺炎を発症し低ガンマグロブリン血症が判明し,Good症候群と診断された.低ガンマグロブリン血症に対して免疫グロブリン投与とマクロライド維持療法が継続され,外来通院中である.Good症候群は胸腺腫に低ガンマグロブリン血症を合併した比較的稀な疾患である.明らかな病態は解明されておらず,繰り返す感染症により予後不良とされる.手術を含めた治療についてもその有効性は議論されており,症例の蓄積が必要と思われる.
著者
富永 哲郎 和田 英雄 古川 克郎 黨 和夫 柴崎 信一 岡 忠之
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1087-1091, 2011-11-30 (Released:2012-01-27)
参考文献数
26

症例は71歳,男性。腹痛を主訴に当院を受診した。腹部CT検査で腹腔内出血と上腸間膜動脈(superior mesenteric artery:以下,SMA)の閉塞を認め,腹部血管撮影検査を施行した。右結腸動脈からの出血がみられ,コイル塞栓術にて止血した。また,SMAは回結腸動脈(iliocecal artery:以下,ICA)の起始部で閉塞していた。形状からSMAの解離が疑われ,血行再建術が必要と判断し手術を施行した。開腹所見では,回腸末端から上行結腸にかけての色調が不良であった。ICA内腔を確認すると塞栓を認めたため,塞栓除去術を施行した。その後,ICA末梢の血流は再開し腸管の色調が改善したため,腸管切除術を行わずに手術を終了した。術後は,大きな合併症を認めず退院した。しかし,3ヵ月後に腸閉塞症で再入院し,右半結腸切除術を施行した。回腸末端から上行結腸は,瘢痕化し狭窄していた。腸間膜動脈塞栓症に対する塞栓除去術後は,虚血に伴う腸管狭窄を念頭に置いた厳重な経過観察が重要である。