著者
古市 尚高 鈴木 譲一
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.457-467, 1990
被引用文献数
1

ジャガイモ疫病菌の過敏感反応サプレッサー(抑制因子)を2種類の異なったレースより抽出し,HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により精製した。サプレッサー活性をもつ分画は,親和性菌,非親和性菌ともに分子量(<i>Mr</i>) 4,700と280の成分であった。これらの成分をジャガイモスライス切片(直径,14mm)に滴下処理したあと,非親和性菌遊走子を接種して,ファイトアレキシン(PA)生成をマーカーとして活性の強さを調べた。HPLCにより純化する前のグルカン成分と,両レースの<i>Mr</i> 4,700と<i>Mr</i> 280のサプレッサー分画は,12.5&sim;50&mu;g/diskの濃度ではレース間で統計的に有意の差は示さなかった。以上の結果から,疫病菌の分子量の異なった本グルカン2成分が,レースにかかわりなくサプレッサー活性を有することが示唆された。標準糖と本サプレッサー成分のTLCによる解析の結果,<i>Mr</i> 280の成分はグルコースモノマーと<i>Rf</i>値が近似した。また,HPLCにより遊走子発芽液中にMr 280の成分が検出されることから,感染初期の過程において機能している可能性が示唆された。