著者
原 隆 古池 達彦
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.793-801, 1999-10-05
参考文献数
31

アインシュタインの一般相対論, 及びその予言する宇宙観は我々の日常感覚とはかなりかけ離れたものであり, 活発な議論の対象となってきた. 特に星の重力崩壊, その結果としてのブラックホールの形成は, 専門家のみならず一般の人の興味をも十分にそそる問題である. アインシュタイン方程式は悪名高き非線形偏微分方程式の典型であり, その性質には(正確に解ける特殊な例などを除き)未知の部分が多い. しかし, ここ20年ほどの間, 計算機を用いた数値相対論の発展とともに, それまでに思いもかけなかったことがわかってきた. 本解説ではその一つ, 「重力崩壊における臨界現象」を取り扱う. (著者の一人が最近までそうであったように)学生時代に一般相対論をかじったまま忘れていたような非専門家を対象に, 「重力崩壊」や「臨界現象」とは何かから始めて, わかりやすく解説することを目的とする.