著者
古澤 徹 阿部 博 小林 野愛
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2021-IOT-53, no.20, pp.1-8, 2021-05-06

エッジコンピューティングは,端末とクラウドの中間に位置するエッジで処理を行うことで低遅延応答や中継トラフィック削減が可能となる新しいパラダイムとして着目を集めている.近年コンテナ仮想化技術や Kubernetes,およびサービスメッシュを用いたマイクロサービスアーキテクチャ (MSA) が普及しているが,エッジにおいても同様に MSA を導入することで,エッジ基盤やエッジアプリケーションライフサイクルの効率的な管理,オートスケールの実行が可能になると期待される.しかし,エッジは利用可能なコンピューティングリソースが限られているため,個々のエッジ内でオートスケールを実行させても処理能力には限界がある.特定のエッジに処理限界を超える過負荷が発生した場合,エッジの処理能力が劣化し,大規模な遅延やサービス停止が発生しうる課題がある.本研究では,コンテナ仮想化技術や Kubernetes,およびサービスメッシュを用いたエッジ基盤における協調型負荷分散の実装手法を提案する.エッジのアプリケーションへの単位時間あたりリクエスト数をモニタリングし,エッジの処理限界を超えるリクエストをリソースに余力ある近接エッジまたはクラウドに転送するようにサービスメッシュ設定を動的に変更するコントローラを実装する.実験により,過負荷発生時のアプリケーションの平均処理時間が改善されることを示す.