著者
古澤 泰治
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

海外共同研究者である小西秀男氏(Boston College)とともに、2国間で締結される自由貿易協定(FTA)をネットワークゲームを用いて分析してきた。産業化度や人口規模において似通っている国同士がFTAを締結しやすく、そのため全ての国々がそれらに関して対称的ならばグローバルな完備FTAネットワークが安定的になることを示した。また、FTA締結国間でトランスファーが可能ならば、国々が極めて非対称的な場合でも完備FTAネットワークが安定的になるという結果も導いた。各国が生産し輸出する差別化された財の間での代替性も重要な役割を果たす。それらの代替性が十分低いならば、完備FTAネットワークは唯一の安定的なネットワークとなる。逆に、もしも差別化財間の代替性が高いならば、完備ネットワーク以外の安定的なFTAネットワークが存在することになる。このようなときは、最終的に世界でどのようなFTAネットワークが張りめぐらされるかはFTA形成のパスに依存してくる。これらの研究成果は"Free Trade Networks,"COE/RES Discussion Paper No.27,Hitotsubashi University(現在専門誌掲載審査中)、"Free Trade Networks with Transfers,"Japanese Economic Review,56(2),144-164,2005にまとめられている。また、人々の効用関数が準線形型のとき、社会厚生は消費者の粗効用と貿易収支の和として表されるという、簡潔で有用な分析結果を"A welfare Decompositionin Quasi-Linear Economies,"Economics Letters,85(1),29-34,2004で発表した。