著者
古賀 啓一 角野 康郎 瀬戸口 浩彰
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 : bunrui : 日本植物分類学会誌 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.121-130, 2006-08-20
被引用文献数
3

キンポウゲ科バイカモRanunculus nipponicusは,分布の南限にあたる近畿地方で絶滅が危惧されている水生植物である.近畿地方における本種の生育地の特定と,生育地の現状について2004年に調査を行った.その結果,標本に記載された生育地15ヵ所のうち, 6ヵ所でバイカモの生育が確認されず,過去に存在していた生育地の40%が失われたことが明らかになった.その一方で,滋賀県では新たな生育地3ヵ所を発見した.バイカモは近畿地方において現在12ヵ所で残存しており, 5ヵ所が滋賀県に, 7ヵ所が兵庫県に分布していることが明らかになった.今回の調査で確認できた生育地の半数以上は,河川改修工事によって川岸や川底をコンクリートで護岸された水路や河川であり,この場合には河床に土砂が堆積していた.土砂には埋土種子が含有される可能性があり,生育地の復元に利用できることも考えられる.近畿地方に現存するバイカモの生育地12ヵ所のうちで保護されている場所は2ヵ所のみであり,他の生育地においても保護施策が必要である.