著者
Setoguchi Hiroaki Nakagawa Masaharu Momohara Arata 瀬戸口 浩彰 中川 政治 百原 新
出版者
植物地理・分類学会 = The Society for the Study of Phytogeography and Taxonomy
雑誌
植物地理・分類研究 = The journal of phytogeography and taxonomy (ISSN:03886212)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.7-11, 2008-09-30

The tree Ilex dimorphophylla Koidz.(Aquifoliaceae)is a vulnerable species that is endemic to the summit of Mt. Yuwan on Amamioshima Island, Japan. This plant hows characteristic leaf dimorphism, which increases its horticultural value, and many individuals have been illegally removed from the natural habitat. We examined the umber of shoots, leaf morphology and plant size of the species in the natural habitat. Based on field observation for two years, we found 84 shoots, of which 32(38.1%)had entire mature leaves, whereas 52(61.9%)had only serrate juvenile leaves. Majority of the examined shoots surveyed fell into the smallest size classes : < 100 cm in eight(ca. 45%)and < 25 mm in diameter at the trunk base(ca. 60%). Leaf dimorphism was clearly demarcated in trees at 130―210 cm in height and 15―27 mm in diameter at the trunk base.
著者
瀬戸口 浩彰
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.43-51, 2017 (Released:2019-06-25)
参考文献数
16

海浜植物には種子散布が海流によって長距離に及ぶものが多く,また匍匐茎が拡がって多くのラメットを形成するものも多く存在する.そのために,海浜植物は系統地理構造を作りにくく,遺伝的な多様性が低いというイメージがある.本稿では,DNAデータを用いた系統地理学と集団遺伝学のいくつかの知見をもとにして,海浜植物群落を保全や復元するにあたっての注意点を提起した.ハマヒルガオとハマエンドウでは日本列島全域にわたって地理構造は存在しなかった.その一方で,集団内の遺伝的多様度は高く,外交配による実生繁殖が集団維持に貢献していることがわかった.ハマダイコンは果実の海流散布能力が高いにもかかわらず,日本列島内で明瞭な南北分化を起こしており,これは花芽形成に必要な春化の必要性が温暖な地域では失われていることが原因になっていた.海浜植物の系統地理構造や集団遺伝構造の研究は事例が少ないため,今後に更なる研究の蓄積が必要である.また,研究事例が無い植物の場合には,出来るだけ近隣地域から個体を導入すること,実生苗の作出による遺伝的多様性の確保が必要である.
著者
米田 稔 瀬戸口 浩彰 原田 浩二 福谷 哲 高橋 知之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

福島第一原発事故で放射能汚染された地域の復興では、森林活動の復活が欠かせない。本研究では、実際に被災した村が考える森林を活用した復興のあり方を実現するための知識の普及、技術の確立、村有林等を対象としてモデル事業を実施した場合の有効性の検証を行う。その研究内容は大まかには以下に分類される。1.森林を活用した住民の生活時間パターンの把握とそのパターン毎の被曝量評価2.現地での天地返し法を主たる除染法とした線量削減効果の評価3.様々な健康リスクを考慮した森林活用健康生活モデルの提案4.村有林を対象としたパイロット除染事業の可能性検討と効果の予測これらの研究を実施し、帰還地域の復興加速化に貢献する。
著者
瀬戸口 浩彰 渡邊 かよ 高相 徳志郎 仲里 長浩 戸部 博
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.201-205, 2000-02-28

南西諸島西表島の船浦にあるニッパヤシ集団は1959年に天然記念物に指定されて以来,縮小の一途をたどっている。この集団の全ての個体(28個体)の遺伝的多様性をRAPDで解析した結果,27個体は全く同じRAPDバンドをもち,小型の1個体だけが僅かな多型を示した。従って,この27個体は遺伝的に同一なクローンである可能性がある。これは集団内で開花しても種子が全く形成されない事実にも関連していると思われる。ニッパヤシは根茎が水平方向に伸長して2分岐し,その各々の先端にシュートを形成しながら栄養繁殖をする性質があり,船浦においてもこの栄養繁殖によってのみ集団が維持されていると考えられる。集団サイズの急激な縮小,集団が栄養繁殖によるクローンであること,結実しないことなどを考えると,船浦のニッパヤシは絶滅の途をたどっていると言える。
著者
古賀 啓一 角野 康郎 瀬戸口 浩彰
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 : bunrui : 日本植物分類学会誌 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.121-130, 2006-08-20
被引用文献数
3

キンポウゲ科バイカモRanunculus nipponicusは,分布の南限にあたる近畿地方で絶滅が危惧されている水生植物である.近畿地方における本種の生育地の特定と,生育地の現状について2004年に調査を行った.その結果,標本に記載された生育地15ヵ所のうち, 6ヵ所でバイカモの生育が確認されず,過去に存在していた生育地の40%が失われたことが明らかになった.その一方で,滋賀県では新たな生育地3ヵ所を発見した.バイカモは近畿地方において現在12ヵ所で残存しており, 5ヵ所が滋賀県に, 7ヵ所が兵庫県に分布していることが明らかになった.今回の調査で確認できた生育地の半数以上は,河川改修工事によって川岸や川底をコンクリートで護岸された水路や河川であり,この場合には河床に土砂が堆積していた.土砂には埋土種子が含有される可能性があり,生育地の復元に利用できることも考えられる.近畿地方に現存するバイカモの生育地12ヵ所のうちで保護されている場所は2ヵ所のみであり,他の生育地においても保護施策が必要である.
著者
西田 治文 朝川 毅守 瀬戸口 浩彰 村上 哲明 青木 誠志郎 ARMAND Rakot 湯浅 浩史
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

平成11年度は、下記地域に分担して最終調査を行い、10年度調査の資料と合わせて順次成果を刊行する予定である。調査に付随した話題の一部は、普及書にゴンドワナ大陸をめぐる植物分布の記事として西田、浅川が紹介したマダガスカル村上が、特にチャセンシダ科、ゼンマイ科の標本を採集した。すでに10年度に西田らとともに収集した資料の遺伝子的解析に着手しており、広分布種とされているレガリスゼンマイに多くの種内変異があることなどがわかり始めている。ボリビア・アルゼンチンボリビアで西田は、シダ類のフサシダ科、チャセンシダ科、シシガシラ科の、青木はタバコ属のそれぞれ遺伝子解析用資料および乾燥標本、、液浸標本を採集した。アルゼンチンではタバコ属を南部パタゴニア地域で広範に採集した。タバコ属内の遺伝子移動に関する論文を投稿準備中である。シシガシラ科の資料は、これまで形態のみで推定されてきた系統関係を検証するために解析が進んでいる。ニューカレドニア浅川が、第三期珪化木化石収集を行い、多数の資料を得た。10年度にマダガスカルで採集したペルム紀および白亜紀材化石とあわせて、比較解剖を進めている。ヤシ科、ヤマモガシ科などの材がみつかっている。ボルネオ瀬戸口が、キナバル山周辺で採集を行い、ビカクシダ属、ヤシ科、ゴマ科など系統解析用の資料を収集した。すでにビカクシダ属については10年度採集のマダガスカルの標本を含め、多の熱帯地域の資料解析が進んでおり、発表の準備をしている。全体として、シダ植物から被子植物まで、いくつかの分類群について、南半球での異なる分布形態とその成立過程が説明できる新たな結果が得られつつある。