著者
古郡 憲洋 岸本 圭子 本間 航介
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.I_165-I_177, 2020 (Released:2020-06-12)
参考文献数
43

里山の景観構成要素の接合部では, 生物の移動等を介して双方の景観要素が持つ物質循環機能が維持されてきたとされる.本研究では, 里山の森林と水田畦畔の接続性に着目し, これが生物群集や物質循環機能に与える影響を評価した.調査は, 新潟県佐渡市の伝統的な畦畔管理がなされた地域と基盤整備が施された圃場で現代的な畦畔管理がなされた地域で行い, 森林と水田畦畔の接続性が異なる環境間で微少環境要因, 土壌動物群集, 有機物分解率を比較した.その結果, 林縁構造が存在する接合部ではリター量が増加し, 林縁付近の有機物分解率が増大した.また, 林縁部が分断された畦畔では, 捕食者の個体数密度の低下, デコンポーザーとシュレッダーの個体数密度の増加, 有機物分解率の増大がみられた.森林と農地が隣接する場合でも, その接続性の違いにより林縁部の物質循環機能が異なることが示唆された.