著者
古郡 憲洋 岸本 圭子 本間 航介
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.I_165-I_177, 2020 (Released:2020-06-12)
参考文献数
43

里山の景観構成要素の接合部では, 生物の移動等を介して双方の景観要素が持つ物質循環機能が維持されてきたとされる.本研究では, 里山の森林と水田畦畔の接続性に着目し, これが生物群集や物質循環機能に与える影響を評価した.調査は, 新潟県佐渡市の伝統的な畦畔管理がなされた地域と基盤整備が施された圃場で現代的な畦畔管理がなされた地域で行い, 森林と水田畦畔の接続性が異なる環境間で微少環境要因, 土壌動物群集, 有機物分解率を比較した.その結果, 林縁構造が存在する接合部ではリター量が増加し, 林縁付近の有機物分解率が増大した.また, 林縁部が分断された畦畔では, 捕食者の個体数密度の低下, デコンポーザーとシュレッダーの個体数密度の増加, 有機物分解率の増大がみられた.森林と農地が隣接する場合でも, その接続性の違いにより林縁部の物質循環機能が異なることが示唆された.
著者
中津 弘 長嶋 直幸 本間 航介 永田 尚志 Nakatsu Hiromu Nagashima Naoyuki Honma Kosuke Nagata Hisashi
出版者
新潟大学農学部
雑誌
新潟大学農学部研究報告 = Bulletin of the Faculty of Agriculture, Niigata University (ISSN:03858634)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.11-15, 2016-02

新潟県佐渡島東部の丘陵地の中で、森林内の放棄棚田を復元しているキセン城地区の鳥類について繁殖期の調査を行った。3回の調査で計30種の鳥類を確認し、ヒヨドリが最も優占していることが明らかになった。他方、島内の山麓谷戸に多いカワラヒワやスズメは観察されなかったが、森林内に点在する農地的なパッチ状生息地であることや、人家集落が近傍に存在しないことがその要因であろう。過去60年程度で棚田が激減したこの地域の中で、このような環境の保全管理が行われているキセン城の鳥類群集は、山麓部のものとは異なる特徴を有していると考えられた。We conducted bird surveys in Kisenjo, on a hilly region on Sado Island, Niigata, Japan, from April to June, 2015. We counted birds at four fixed-radius points, and recorded all bird species that occurred in this site. 30 species of birds were recorded, and the Brown-eared Bulbul (Hypsipetes amaurotis) was the most abundant species. The most of the land in the vicinity of the study site is forested, with only few patches of small open spaces such as rice paddies and wetlands, as majority of cultivated lands have been deserted in past six decades. There are no residential areas, and some fallow lands have been restored as wetlands in the study site in recent years. This patch-matrix structure appeared to exclude some bird species from the site, like the Oriental Greenfinch (Chloris sinica) and Eurasian Tree Sparrow (Passer montanus) that are abundant on lowland edge habitats on Sado Island. The result of this study suggests that such habitat management could produce a unique bird community.