著者
茨田 通俊 吉元 信行 田辺 和子
出版者
(財)東方研究会
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

タイ所伝Pannasajataka(五十本生話)中の物語のうち、第1話〜第39話は序列が明確であり、これらを中心に研究を進めて来た。このうち大谷大学図書館所蔵貝葉写本に含まれる25話の物語については、既にローマ字転写が終わっており、本研究では大谷貝葉には含まれない第1話〜第11話、第19話〜第21話について分担を決め、各自でローマ字転写、校訂、翻訳の作業を進めた。対照すべき資料として、研究分担者の田辺和子が将来したタイ国立図書館所蔵A、B、C、Dの貝葉写本、バンコクのWat Pho寺院所蔵の貝葉写本等を利用した。その結果補助金交付期間内に、約10話のローマ字転写を終えることができた。翻訳については新たに4話の訳出が完了し、第2話Sudhanakumarajatakaの校訂が田辺によってなされた。また大谷大学等において年度ごとに3〜4回の研究会を開き、研究者間で意見・情報の交換を行った。その中で、タイ所伝Pannasajatakaのローマ字転写、校訂本作成に当たってのガイドラインをまとめ、将来の出版に向けての布石を打った。補助金交付期間内に、国内外で調査を頻繁に実施した。海外へはタイを中心に赴き、現地の研究者から有益な情報を得ると共に、貴重資料の閲覧に成功した。国内では、大正大学図書館、金沢大学付属図書館の暁烏文庫において貝葉写本の調査を行い、横浜のアジア造形文化研究所を訪問した。思想研究としては、ビルマ版Zimme Pannasaや北タイ版Pannasajatakaとの比較によって、伝承した地域による内容の相違を検討することで、Pannasajatakaの起源に迫ることができた。また異なる物語間の関係の把握が、今後の課題として認識された。研究成果については、日本印度学仏教学会、パーリ学仏教文化学会等で、各自が口頭発表を行い、内外の学術雑誌、論文集に関係論文を掲載した。今後は、Pannasajatakaのうち第39話までの物語のローマ字転写を早急に完成させ、校訂と和訳を進める必要がある。さらに未着手の第40話以降のついても作業を始める予定である。