著者
吉元 宇楽
出版者
横浜経済学会
雑誌
エコノミア (ISSN:00129712)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.15-29, 2015-11-30

アベノミクスにより円高が是正され,2014 年には1 ドル120 円台を推移するほど円安が進んだ.このような円安局面の中,輸出企業の採算改善という「円安効果が現れている部分」と,輸出量が変化せずに貿易収支が改善しないという「期待されていた円安効果が現れない部分」が出てきている.これら全てを踏まえて,アベノミクスの円安は輸出企業の業績にどのような影響を与えるのかを考察する.本論文では為替レートが企業収益に影響を及ぼす経路を二つに区分し,実証分析を行った.一つは所得収支や海外売上高増減を通じた影響であり,海外での収益や配当金などが為替レートによって決算時に膨れ上がる(萎む)などにより生じるものである.もう一つが輸出競争力や企業固有のその他の要因による影響である.本論文の実証分析では,それぞれの分析期間でこれらの要因のどちらが企業収益に有意に影響しているかについてパネル分析を行った.その結果,円高期(2007~ 2011 年)には輸出競争力など企業固有の要因が企業収益の増加に有意に正の影響を与え,逆に円安期(2012 ~ 2013 年)には海外からの所得収支の増加が輸出企業の採算改善に強く影響したことが明らかになった.したがって,アベノミクスの円安は海外で活躍する企業の収益に対して,総じて好影響を与えている.円安や株高,投資家マインドの改善などあらゆるものが,企業行動を活発化させるだろう.