著者
平井 慶充 吉増 達也 内藤 古真 宮坂 美和子 岡村 吉隆 中村 靖司
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.832-835, 2010

52歳男性,2002年に検診で胸部異常陰影を指摘された.近医を受診し,CTで右S1に1cmのすりガラス状陰影を認めたが,気管支鏡で診断がつかず経過観察とされていた.その後増大傾向を認めなかったが,2008年の胸部CTで,胸膜陥入像を伴う1.5cmの結節へと増大傾向を認めたため当科紹介となった.CTでは一部に充実成分を伴うすりガラス状陰影であり,PET-CTで同部位にSUV max 1.06の弱い集積を認めた.高分化型腺癌の可能性が高いとし手術を施行した.胸腔鏡下部分切除術を施行し,術中迅速病理診断でadenocarcinomaの診断であった為,右上葉切除術+縦隔リンパ節郭清を施行した.術後病理診断で,Noguchi B typeの腺癌の内部に一部充実成分を含み,免疫組織化学染色では,EMA(+/-),vimentin(+),PgR(+),またNCAM(+),synaptophysin(+/-),chromogranin A(-),CD34(-),α-SMA(-),factor VIII(-)であった.以上より同部位はminute pulmonary meningothelial-like nodules(MPMNs)と診断された.術後経過は良好であり,術後1週間で退院となった.【考察】MPMNsは剖検例や切除肺に偶然見つかる微小病変であり,報告例も少なく不明な点が多い.しかし近年画像診断の進歩に伴いGGOを呈する腺癌や腺癌の肺内転移との鑑別が問題になることがある.また肺悪性腫瘍,特に肺腺癌との合併やMPMNsのLOHの報告もあり,背景肺の変異の蓄積によるgenomic instabilityが腺癌発生と共通した要因である可能性がある.