著者
吉岡 三惠子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.433-437, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

【目的】乳児健診で運動発達遅延を指摘されたフロッピーインファントには種々の疾患が含まれる. この中には筋緊張低下が改善し, 後方視的に先天性良性筋緊張低下と診断される一群があるが, 知的障害や他の脳障害が明らかになる例が多い. 今回, 2歳以上まで経過観察された症例の神経学的予後を検討した. 【方法】乳児健診後, 直接または他院を経て当センターをこの8年6カ月間に受診した症例の内, 全身の筋緊張低下を認め, 腱反射が正常または低下している例で, 在胎37週以上, 生下時体重2,500g以上, Apgar score (5分) 7点以上で出生し, 家族歴・大奇形・頭部画像所見・染色体検査 (Gバンド・fluorescence in situ hybridization) ・血清creatine kinase値・血中乳酸・ピルビン酸・血液アミノ酸分析に異常がない32例 (男15, 女17) を対象とした. 4カ月健診から16例 (以下, 4健群), 9カ月健診から16例 (9健群) が該当した. 【結果】頚定は4健群, 9健群で全例可能. 座位は4健群では全例で, 9健群では14例で可能だが, 2例は不可で, それぞれRett症候群, 脊髄性筋萎縮症と遺伝子診断された. 独歩は4健群の14例, 9健群の13例で可能となり, この27例中知的障害を18例 (67%) に, 自閉症スペクトラムを5例 (19%) に認めた. 独歩不可は4健群2例, 9健群3例で, 先天性ミオパチーや奇形症候群が疑われた. 【結論】筋緊張低下が改善し独歩可能となった例にも知的障害や自閉症スペクトラムを示す例が多く, 早期から知的や行動面に留意した療育が必要であった.