著者
吉岡 直人 阪口 秀
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

物理的な砂山崩しの実験(実際に砂を用いて砂山を形成する実験)において、砂山の崩れ方に「自己組織化臨界現象」的な振舞いと、これと対照的な「固有地震」的な振舞いが発現することが知られている。これまでの研究から、この2つの典型的な振舞いは、砂山を形成する砂の粒径と、砂山を支える円盤の直径との比のみによって決定されることが判明している。しかしながら、これらをもたらす物理的な原因は未解決である。これを解明することが、本研究の目的である。この両者における砂山内部の応力鎖の構造の違いが、この2つの振舞いの原因ではないかと推察されるので、光弾性実験および離散要素法によるシミュレーションによって問題の解決を図った。すなわち、砂の粒径と砂山の大きさをさまざまに変えて、砂山内部の応力鎖の構造を、光弾性実験と離散要素法によるシミュレーションによって実際に"見た"ところ、小さな砂山はナダレによって砂山全体が影響を受け、内部はいつまでも固まらないのに対し、大きい砂山はナダレによって応力鎖の構造はかなり深い部分まで影響を受けるが、全く影響をうけない固化した部分が深部に形成されていることが分かった。このことから、ナダレの大きさを規定する要因が何らかの不均一性であると考えると、小さい砂山では表面の凹凸が不均一性の主たる要因であり、小さいナダレが頻発するのに対し、砂山が大きくなると、表面付近と深部の強度の差が不均一性の主要因となり、大きなナダレが周期的に発生するのではないかと考えられた。