著者
吉川 博通
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.579-583, 2012

「健康寿命」という言葉が世間でよく使われ出したのに合わせ、元気な高齢者が実に多く見受けられるようになり、ますます超高齢化まっしぐらである。一方で、健康のメンテナンスに大いに利用されているわが国の人間ドック健診受診者の中にも高齢者が増え始め、数は少ないが75歳以上のいわゆる後期高齢者がチラホラみられるのも珍しくなくなった。<br> ただ後期高齢者になると、健康上、これまでの常識が通用しない面が多くなり、健康そのものの指標が大きく変わることから、一般受診者とは一律に取り扱うことが難しく、どうしても自立した生活が困難となる生活機能障害を予防するための特別なライフステージに応じた対応が必要となってくる。<br> 昨今、健診無用論を唱える学者もいるが、これは個人個人の哲学的問題であって、イエスもノーもいえるものではない。ただ年々人間ドック健診の受診者が増えることを考えると、それならばその人たちに満足してもらえるシステム作りが必要となってくる。高齢者たちを集め、全国各地で介護予防健診と銘打って全人的、包括的なシステムを構築し、健診を行っていることはすでに周知の通りである。しかしこのシステムを完璧に現在日々の一般健診の中で、数少ない高齢者に行うとなるとそれは至難の業といわざるを得ない。まずできる範囲で一つ一つ着手して行き、これからも増えるであろう高齢者の幸せな老後を送るのに大事なQOLを高める手立てに手を貸すとならば、願ってもない総合健診のレベルアップに繋がるということになるのではないだろうか。