著者
菅谷 壽晃 吉木 敬
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.2093-2099, 1998-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

自己免疫疾患の病因のひとつとして, RNAウイルスの一種であるレトロウイルスが最近注目されている. ATLの原因ウイルスであるHTLV-Iは,慢性関節リウマチ様の関節炎やSjögren症候群類似の唾液腺炎,ブドウ膜炎などさまざまな自己免疫疾患と関連を持つことが明らかとなり,現在では広く自己免疫疾患の病因の一つとして認知されるに至っている. AIDSの原因ウイルスであるHIVも,関節炎やSjögren症候群類似の唾液腺炎との関連が示唆されている.また,プロウイルスとしてヒト遺伝子に組み込まれた内在性レトロウイルスも自己免疫性疾患との関連が想定されており,とくにインスリン依存型糖尿病の病因に関わっている可能性がごく最近報告された.このように,レトロウイルスは自己免疫性疾患の発症に深く関与していると考えられ,その病因解明の切り札として期待されている.