著者
吉村 万由子
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.271-274, 2017 (Released:2017-07-23)
参考文献数
2

症例の概要:患者は60歳女性.歯科治療に対する恐怖および歯の挺出による審美不良と義歯不適合による咀嚼困難を訴えて来院した.挺出歯の抜歯および上下顎全部床義歯を製作することとした.患者の強い訴えに応じて無口蓋全部床義歯を製作し,良好な経過とともにQOLの向上も得られた.考察:義歯補綴は,咬合,咀嚼,嚥下などの機能回復に留まらず,審美性や快適性などの主観的な満足獲得も重要であり,本症例は患者の要求を重視して治療を行ったことが,高い満足度に繋がったと考えられる.結論:義歯の装着感に不満を持ち,通常形態の義歯を受け入れられない患者に対し,顎堤の異常吸収,疼痛や咀嚼障害が起こらないよう配慮したうえで,患者の要望を考慮した義歯形態としたことで良好な結果を得た.