著者
吉村 慶丸
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大學理工學研究所報告 (ISSN:03716090)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.179-198, 1951-11-30

It is unquestionable that the lowering of the buckling load of a circular cylindrical shell is due to the non-linear characteristic of finite displacement theory proposed by v. Karman and Tsien. The author developes further considerations about the essential features of the buckling phenomena. First of all, the fact that the buckled surface is very near to a developable one different from the original cylindrical surface, and therefore the deformation in this case is finite and approximately inextensional, is confirmed both theoretically and experimentally. Based upon this fact, the general buckling and the local buckling with and without the loading spring being analysed from the view-point of energy, it is clarified that the buckling processes are all explained by the energy difference before and after buckling and the energy barrier to be jumped in this case. According to the results, the local buckling is more liable to occur than the general buckling, and in all cases the minimum load, above which the buckling can take place, exists, it being smaller in the case of local buckling than that of general buckling, and further depends on the rigidity of the spring in the case of local buckling. (Received September. 3, 1951)
著者
吉村 慶丸
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大學航空研究所報告 (ISSN:03761061)
巻号頁・発行日
vol.25, no.8, pp.161-219, 1959-09

この研究の目的は, 従来塑性力学において慣用されている, 歪増分の概念に本質的な修正を行なうことによって, 塑性力学の理論に内在する矛盾を除去し, 該理論を微小, 有限変形の全領域にわたって完全に矛盾のない論理的体系に拡張かつ改良することである。まず, 一般に弾性論において用いられている, 物体要素の幾何学的形状の変化によって規定される, 歪およびその増分は塑性変形を記述する目的のためには不合理であることが例証される。現在の塑性力学, 更に正確にいえば歪増分理論, は特殊の変形を除いて, このような歪および歪増分を用いている点で本質的な誤りを侵しており, そのための矛盾は変形の増大と共に顕著になる。塑性変形の記述のために合法的な歪および歪増分の概念を導入するために, 著者は塑性変形の本質的性格についての明確な検討を行ない, その結果, 応力と共に, 歪, 歪増分の補足すべき基本条件を誘導した。かかる必然的推理に基づいて, ある変形状態における歪増分はその変形状態が同時に無変形の状態であるように定義される。歪はこのような歪増分を与えられた変形経路に沿って積分することによって得られ, それはその経路に依存し, 変形後の幾何学的形状には直接には依らないことが示される。この歪は対象とする物質の微視的構造変化に対応するものと考えられ, 塑性変形を記述するための歪テンソルとしてのみならず, たとえば異方性のような変形履歴に依存する状態を規定するところの歪履歴テンソルとしても役立つ。更にこの歪は, 単純伸張に対していわゆる対数歪を与えることが示される。したがってそれは履歴依存性一般自然歪と名付けることのできるものである。かくして塑性変形は二重の意味において, すなわち第1に歪それ自身において, 第2に応力・歪関係において, 履歴現象であることが明らかとなる。応力は物質中の単位面積に対して, それに作用する現実の力を与えるようなテンソルとし定義される。この応力は, 特に単純引張りに対しては, いわゆる真応力を与える。歪, 歪増分および応力をこのように定義することによって初めて, 仮想仕事の原理が, 微小, 有限変影の全領域にわたって, 微小変形の場合と全く同じ形式で表現されることが示される。この結果, このような一般の変形に対する平衡方程式, 状態方程式等のすべての関係がまた, 微小変形の場合と同様の形で成立する。このようにして塑性力学, すなわち歪増分理論, はその根本から組換えられ, 極めて自然に微小および有限の一般の変形の場合に拡張される。