著者
森田 千里 吉沢 英造 小林 茂
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.473-481, 1997-04-25

抄録:成人の椎間板は,栄養血管を有さず人体の中で最大の無血管組織であり,その栄養路は椎体終板および線維輪を介する拡散によるとされている.なかでも椎体終板を介する経路の障害が椎間板変性の原因として重要視される.この経路において椎間板の栄養に関与すると考えられる構造として,軟骨管(cartilage canal)とvascular budsが存在する.本研究では,椎間板栄養経路のメカニズムを知ることを目的として,幼若期の軟骨性椎体部分にみられる軟骨管と,その後椎体終板付近に出現するvascular budsの微細構造を生後2日齢と生後6カ月齢の家兎の椎体をそれぞれ組織学的に観察した.今回は,microan-giogram・光顕・走査型電子顕微鏡・透過型電子顕微鏡下に観察し比較・検討した,その結果,軟骨管とvascular budsの形態は類似していることが証明され,両者は椎間板の栄養路として重要な位置にあることが示唆された.また両者の血管は有窓型を呈し血管透過性が高く,活発な代謝が行われているという形態学的な根拠が得られた.そして軟骨管では軟骨膜から軟骨細胞が形成され,骨性終板内vascular buds基部では間葉系細胞から骨芽細胞様の細胞が形成され,線維輪側のvascular budsでは線維芽細胞様の細胞から膠原線維が産生されると考えられる新しい知見が得られた.
著者
小林 茂 吉沢 英造 蜂谷 裕道 鵜飼 高弘 中川 雅人 森田 知史 中井 定明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.357-366, 1992-04-25

抄録:腰痛や坐骨神経痛などの腰仙部神経根症状を呈する疾患の病態は,機械的圧迫に伴う血流障害や脳脊髄液の停滞が長期存在し,根内環境の恒常性が破壊されることによって生ずると考えられる.特に圧迫に伴う血管透過性の亢進は,根内浮腫,強いては線維化の形成に深く関与し,この過程を解明することが今後の腰痛疾患の治療を行っていくうえで有用であると考えられる.今回はイヌの神経根における血液―神経関門の機能をトレーサーを用いて形態学的に検討した.その結果,神経根に見られる血液―神経関門を有する連続型毛細血管には,脳脊髄液をドレナージする選択的透過機構が存在した.しかし,急性圧迫障害時には,血管内皮細胞間での密着帯の開大による透過性亢進や飲小胞による細胞内輸送の増加により関門は破綻し,根内浮腫が生じることを証明した.