著者
吉澤 孝幸
出版者
大仙市立大曲中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

1. 研究目的 : 本研究では、授業改善の手段として「CAN-DOリスト」を取り入れることで、生徒のスピーキング力や教師の組織的な指導力の向上にどのような効果が見られるのかを検証することを目的とした。2. 研究方法 : 研究を実施するにあたり「拠点校・協力校制度」を活用し、拠点校及び協力校2校の中学3年生247名を対象とした。共通の実践内容として、スピーキングの前に原稿を書かず、メモから英文を口頭で構成するという手法を取り入れ8ヶ月間授業を実践した。拠点校においては「CAN-DOリスト」を到達目標として生徒に意識させ指導を行った実験群と「CAN-DOリスト」を評価の手段にのみ活用した統制群に分け授業を行った。これら試みを量的に検証する手段として、4技能で構成される外部テストを活用した。3. 研究成果 : ライティングにおいて生徒が書いた「文の数」、スピーキングテストにおける「アティチュード」の得点、そして「英語の問いに対する応答」の正答率において、実験群の方が統計的に有意に高い傾向が見られた。次に、共通の指導に対して、拠点校と協力校の生徒間で意識の差が生じるのかを検証するために質問紙を実施しクロス集計を行った。その結果、3校の生徒間でリッカート尺度の積極的肯定的回答に有意差は認められず、3校とも積極的肯定の割合が高いことが認められた。このことから、導入した指導方法は、拠点校・協力校とも同じ程度の影響をもって取り入れられたことが明らかになった。本研究から「CAN-DOリスト」は4技能以外の情意面にも影響を与え、教室における積極的な行動様式を生み出す可能性を示すことができたことは大いに意義があったと言える。また、拠点校が協力校への波及効果の程度や、受け入れ側の教員はどのような意識をもっているかを明らかにできたことで、今後の事業を継続していく上でも有用な情報となると考えている。