著者
吉田 彰宏
出版者
(財)野口研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

グリーンケミストリーを指向した環境調和型反応の開発が強く求められている昨今,グリーンな溶媒として知られるフルオラス溶媒とそれに固定化されリサイクル可能な触媒を用いる反応の開発は,重要な課題めひとつである。昨年度は,フルオラス二相系における三級アルコールのエステル化反応およびプリンス反応の開発,さらには新しいフルオラス溶媒の探索を行った。本年度は,フルオラスビスマス(III)触媒を用いたフランのDiels-Alder反応やフルオラスハフニウム(IV)触媒を用いたFriedel-Craftsアルキル化型反応の検討,さらにはフルオラスメソポーラスシリカゲルの開発を行った。また,新しいフルオラス溶媒の探索も引き続き行った。まず,フランのDiels-Alder反応であるが,原系の安定性が故に逆反応が起こりやすいため,3日〜1ヶ月ほどかけて反応させることが少なくないことが知られている反応である。そこで,反応時間の大幅な短縮を目的に種々のフルオラスルイス酸触媒を用いたフルオラス二相系反応を試みたところ,フラン溶媒中ビスマス(III)アミド触媒が高活性を示し,中程度の収率で付加環化体が得られた。副生物を減らすため,すなわち活性を制御するためにルイス塩基を共存させた系も検討したが,残念ながら収率の低下のみが観測された。メソポーラスシリカはゾル-ゲル法によりR_fCH_2CH_2Si(OEt)_3を用いて調製した。その結果,市販されているFluorous Technologies製のFluoroFlash^<【○!R】>よりおよそ1.5倍高いフルオラス親和性を示すことを見出した。フルオラス溶媒の探索では,DuPont製のKrytox Kシリーズ(K5〜K7)が高沸点且つ比較的低粘度であり,有機溶媒へのリーチングが検出限界以下という効果的な溶媒であることを見出した。