著者
山本 博 吉川 省子 吉田 正則 石原 暁
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.478-486, 2008-10-05
被引用文献数
3

扇状地は、地下水が扇頂で涵養され扇央では地下水面までの深さが深く、扇端で地表に流出するため、農業的には扇頂では河川から、また扇端では湧水帯からの利水が容易であるが、扇央では地下水位が低いため畑地としての利用が多い。扇状地ではこうした利水の一般的特徴をもつが、香川県の瀬戸内海側に位置する扇状地では出水(ですい)と呼ばれる浅層地下水の湧水があり、扇央においても浅層地下水を引き出して水田への灌漑用水として利用している。このため干ばつ時に、湧水を利用して下流の水田へ水を供給し干ばつの進行を防いできた。筆者らは香川用水導入後の土器川扇状地における湧水と農業用水の利用実態を明らかにすることを目的に、1994〜1995年にかけて、湧水及び農業用水の水位、流量の測定を行い浅層地下水の流動、および夏季の水収支を解明したので報告する。そして、この実態解明にもとづいて、香川用水導入後における湧水利用の変化を検討した。