著者
中村 裕之 荻野 景規 長瀬 博文 吉田 雅美
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

低レベルマイクロ波の全身暴露によってもたらされる内分泌免疫系への影響を脳内神経伝達物質との関連において解明することを目的に、マイクロ波(周波数2,450MHz、強度2mW/cm^2、90分間)暴露による脾臓細胞中ナチュラルキラー細胞活性(NKCA)、血中の諸指標と下垂体と胎盤のβ一エンドルフィン(βEP)の変化を妊娠ラットあるいは処女ラットにおいて検討した。このレベルのマイクロ波は、処女ラット、妊娠ラットでそれぞれ、0.8と0.9°Cの温度上昇をもたらしたが、血中コルチコステロンへの有意な変化は引き起こさなかった。処女ラットでは認められなかったが、妊娠ラットのマイクロ波暴露群のNKCAは非暴露群に比べ有意に減少した。オピオイド受容体拮抗剤であるnaloxoneの前処置では、妊娠期におけるマイクロ波によって低下したNKCAと、上昇したPRL、低下した視床下部medianeminenceのCRHをreverseした。一方、CRH受容体拮抗剤であるα-helicalCRHのicv投与によっても同じく、マイクロ波暴露によって上昇した血中プロラクチン(PRL)と下垂体βEPと、減少したNKCAをreverseした。これらの結果から、妊娠中のマイクロ波暴露による免疫機能低下には、マイクロ波暴露に際して視床下部CRH神経系と、視床下部あるいは下垂体のオピオイド神経系が刺激され、その結果、下垂体PRLが活性化されるという中枢性機序が考えられた。その際のマイクロ波による生体影響は、マイク口波の温熱作用と非温熱作用の両作用によると考えられた。