著者
吉野,諒三
雑誌
日本統計学会誌. シリーズJ
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, 2008-03

本論文では,戦後日本の統計学の展開を,特に統計的標本抽出理論に基づく科学的世論調査研究の実践的方法論確立の観点から振り返る.統計学会75年の歴史のなかで,実のある統計学の発展は「歴史」と「理論」と「実践」の相互関係の中ではじめて必然となることを,戦後民主主義発展の基盤となった統計科学的世論調査研究が例証していることを再確認する.また一方で,近年,個人情報保護等の影響で調査環境が悪化し,調査遂行上の著しい困難がもたらされ,世論調査の統計的基盤が揺らいでいる.本論文では,この問題解決への試案を示唆するが,これが一つの契機となり,多くの統計学者の尽力により,近い将来,再び統計科学的世論調査が揺るぎのないものに再構築されることを期待する.