- 著者
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同免木 利加
- 出版者
- 岡山大学大学院文化科学研究科
- 雑誌
- 岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.1, pp.17-29, 2007-03
『枕草子』二六一段「うれしきもの」に、次のような一節がある。もののをり、もしは人と言ひかはしたる歌の、聞えて、打聞などに書きいれらるる。みづからの上にはまだ知らぬことなれど、なほ思やるよ。『枕草子』が、己の願望を充たすために清少納言によって書かれた「自作自演の歌語り」であるということは既に言われている通りであろう。しかし。これも既に言われていることであるが、『伊勢物語』や『大和物語』に見られる形式に則った「歌語り」は残されていない。おそらく彼女が志向したのは、彼女が権力闘争や愛憎劇に巻き込まれる生々しい物語ではなく、言葉でのみ関係性が保たれる物語であった。拙論では、『枕草子』の特徴としておそらく最も有名であろう「清少納言自賛」から、定子と清少納言の在り方、特に、前期章段と後期章段における両者の在り方の変化について見てゆく。