著者
向井 通郎
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.426-435, 2011-10-20 (Released:2020-02-10)
参考文献数
20

本稿ではケアワーカーの腰痛の罹患状況を介護業務の内容とその実践上の方法に着目し質問紙調査を実施し検討した.対象者は介護老人福祉施設60施設に勤務する,1,191人のケアワーカーである.ケアワーカーの腰痛が問題視されて以来継続し腰痛有訴率が高く,この調査においても55%を超える者が腰痛を抱えながら業務に従事していた.また,17%の者は腰痛の罹患歴があるものの現在は腰痛の訴えがない.27%の者はこれまで腰痛に罹患することなく業務をこなしている.身体負担の大きい介助動作として排泄や入浴に伴う移乗・移動動作が負担となっていた.その介助の実施方法について,対象者との距離,立ち上がり後の姿勢の安定に配慮し実践がなされてはいるが,多くのケアワーカーは,「持ち上げ」により実施している実態が明らかとなった.また腰痛の軽減・予防を目指すうえでは,身体への負担が少なく,安全に配慮した介助技術を実践場面で具体的に伝達することが求められ,そのためには職員間の情報交換や教示の機会を増すことが有効であると考えられる.