著者
向井原 くるみ 太田 雅規
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.185-195, 2021-08-01 (Released:2021-10-02)
参考文献数
42

【目的】幼少期の食べ物の好き嫌いの有無,克服経験や克服の意思の有無が,成人後のストレス対処能力に及ぼす影響を検証することを目的とした。【方法】幼少期の嫌いな食べ物の有無,嫌いな食べ物があった場合は克服経験や克服の意思の有無について,後方視的な調査を行った。質問票はネット調査会社のモニター(20~39歳)約70万人に配信し400人に達するまで回収した。現在のストレス対処能力指標として首尾一貫感覚(Sense of Coherence, SOC)13項目版を用いた。SOCは健康保持力とも呼ばれ,ストレスの多い状況であっても対処し成長の糧に変える力で,下位尺度は把握可能感,処理可能感,有意味感の3つからなる。SOC総得点と共に下位尺度についても検証を行った。【結果】有効回答は94.8%(400人中379人)で,嫌いな食べ物がなかった者は95人(25.1%)であった。嫌いな食べ物がなかった者は,あった者と比較して処理可能感が有意に高い結果であった。嫌いな食べ物の克服意思のあった者はなかった者に比べ,SOC総得点が有意に高かった。克服経験の有無と克服意思の有無を加味したSOCとの関連についての検証では,克服経験の有無とは独立して,意思のあった者はなかった者よりもSOC総得点は有意に高かった。【結論】幼少期に嫌いな食べ物がないこと,嫌いな食べ物を克服する意思を持つことが成人後のSOCを高めるために有効である可能性が示唆された。