著者
呉 揚
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-17, 2015-01-01

空間的配置動詞「そびえる」は、金田一(1950)では終止述語になるとき必ずシテイル形式になるとされる。一方、影山(2012)では「そびえる」にはシテイル形式もスル形式もあるとし、両形式によって事象叙述と属性叙述が区別されると主張する。本稿では、テクストとの相関性を全面的に視野に入れ、「そびえる」のアスペクト・テンス形式のテクストにおける分布の実態を調査し、その意味と機能について考察した。その結果、「そびえる」は、非アクチュアルなテクストに現れ、恒常性を表す客観的用法を基本とするが、出来事の展開のあるアクチュアルなテクストでは、書き手と登場人物の捉え方や他の出来事との時間関係が浮かびあがってきて、主観的な側面とタクシス的機能が前面に出てくることが明らかになった。「そびえる」に限らず、空間的配置動詞のアスペクト・テンス形式を分析する際には、テクストとの相互作用を考慮しなければならない。