著者
李 璟媛 呉 貞玉 篠原 久枝
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.172, pp.23-34, 2019

本研究の目的は未就学児を持つ親におけるしつけと虐待に関する意識と実態を明らかにすることである。2018 年9月から10 月の間に韓国の昌原市にある保育所などの協力を得て,500 部の質問紙を配布,271 人から有効回答を得た。本稿では母親238 人を分析対象とした。分析の結果,母親は,子どものことをよく理解し,子育てに充実感を感じており,子どものしつけは親の責任だと考えていることを確認することができた。子どものしつけに関しては配偶者と話し合っており,家族以外にも相談できる人がいるなど,母親の子育て環境は決して孤立しているわけではないと思われる。母親の多くは,しつけのための体罰は肯定するものの,それが子どもの心や体に傷を与える場合は虐待になると考えていた。また,母親の多くは,しつけに対して不安と悩みを抱えており,本稿では,自分のしつけ行為が虐待にあたるのではないかと考え,しつけと虐待のはざまで悩む母親の様子を確認することができた。