著者
周 飞帆
出版者
千葉大学国際教養学部
雑誌
千葉大学国際教養学研究 = Chiba University journal of liberal arts and sciences (ISSN:24326291)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.39-55, 2017-03

[要旨] 本論文は、中国国内における都市-農村間の人口移動(「都市新移民」)に焦点を当てた研究、中でも欧米の先行理論に基づいた「社会融合」(social integration)研究を批判的に分析・検討するものである。いわゆる「都市新移民」とは、従来は「盲流」、「農民工」などとして語られる出稼ぎ農民であるが、近年、都市滞在期間の長期化や、滞在方法の多様化、集団内部の分化など、国際移民に似た側面をもつことから、「都市新移民」と呼ばれるようになった。また「新型の都市化政策」を推進する中国の政策を背景に、どのように都市の新住民として定住・吸収するか注目され、近年様々な研究が展開されている。しかし、人種、民族が異なる人々を社会的に統合することを目標とする欧米社会と違って、中国の都市新移民は抱える課題は果たしてそうした理論を援用することができるか、またその際どのような研究課題があるのかといった課題が未解明のままとなっている。本研究では、政治学、社会学、人類学を中心とした「都市新移民」に関する研究をレビューし、社会的排除、同化理論や「分節された同化理論」の応用、コミュニティ理論に触れつつ、現在展開されている中国の研究現状と課題についてと考察した。