著者
古屋 智規 高橋 賢一 橋爪 隆弘 久保田 穰 和嶋 直紀 橋本 直樹 伊藤 誠司 鈴木 行三 伊藤 良正
出版者
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.121-125, 2003

bolus造影helical CTによりIIIb型膵頭部完全断裂と診断し, 尾側膵胃吻合を行って良好な経過を得た症例を経験したので報告する. 症例は19歳, 女性. 2001年8月27日, 軽ワゴン運転中防雪棚に衝突. 上腹部をハンドルに強打し近医に搬送された. 収縮期血圧62mmHg, 腹部造影CTで外傷性膵損傷と診断されたが, 損傷程度の把握不能で翌日当科に紹介された. 腹膜刺激症状あり, 気管内挿管後にbolus造影helical CTで膵頭部の完全断裂と診断して直ちに開腹した. 膵は上腸間膜静脈~門脈本幹右縁で完全断裂していた. 頭側主膵管は縫合閉鎖し, 尾側膵断端は主膵管にカニュレーションし, 端側で胃後壁に吻合した. 術後経過良好で術後49日で退院し, 術後膵機能に問題なく, 現在元気に社会復帰している. bolus造影helical CTが外傷性膵損傷の損傷部位と程度の把握に有用で, III型膵頭部完全断裂と診断された場合, 尾側膵胃吻合は, 手技が単純でかつ機能温存の面からも極めて有用な術式と考えられた.