著者
高松 俊昭 和田 仁一 深田 栄一 松本 博志
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.781-787, 1980-12-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

放射線を用いて多孔質ポリテトラフルオロエチレン (EPTFE) の種々のグラフトポリマーを作り, それらの抗血栓性を調べた. EPTFEは内径10mm, 厚さ1mmの管状および厚さ0.79mmのシートを用い, ビニル系モノマーは酢酸ビニル (VAc), メタクリル酸メチル (MMA), スチレン (St) および2-ヒドロキシエチルメタクリラート (HEMA) であった. EPTFEはこれらのモノマー液中でγ線を照射し, グラフトポリマーを作製した. VAcグラフトポリマーの一部はビニルアルコール (VAl) に, Stグラフトポリマーの一部はスルホン化スチレンに変換した. これらのグラフトポリマーを室温で生理食塩水中で強制伸縮したときの吸水量を測った. その飽和吸水量はグラフト率や親水性の増加によって増加した. 生理食塩水に対する接触角は飽和吸水最の大きいものほど減少した. In vivoテストでの開存率はグラフト率が5%以下では良い結果を与え, VAl>MMA>VAc>St>スルホン化Stグラフトポリマーの順に低下した. スルホン化Stグラフトポリマーを犬の上大静脈に移植中, 溶血が起こり, 血栓による厚い内膜が早期に形成された.