著者
和田 克彦
出版者
水産庁養殖研究所
雑誌
養殖研究所研究報告 (ISSN:03895858)
巻号頁・発行日
no.3, pp.p1-10, 1982

南西諸島(奄美大島,沖縄島,西表島)の4地点から採集したアコヤガイ属の三種,アコヤガイPinctada fucata,モスソアコヤガイP. albinaおよびミドリアオリガイP. macultaの種内および種間の遺伝的変異を電気泳動法で調べた。すなわちデンプンゲル法によりロイシンアミノペプチダーゼ(LAP),テトラゾリウムオキシダーゼ(TO)および筋肉蛋白(MP)のバンドを支配する計4遺伝子座にある遺伝子の頻度などを比較した。LAPバンドを支配する2遺伝子座(Lap1,Lap2)には,前者で6個(アコヤガイ)および7個(ミドリアオリガイ)の遺伝子がみられ,後者では4個(アコヤガイおよびモスソアコヤガイ)および6個(ミドリアオリガイ)の遺伝子の存在が推定された。TOのバンドはダイマー型パターンを示し1遺伝子座(To)にある4遺伝子に支配されると考えられた。MPの2つのゾーンのうち陽極側のバンドについてはアコヤガイとミドリアオリガイでMp遺伝子座にある2つの遺伝子が推定され,モスソアコヤガイではそれらと泳動度の異なる一本のバンドのみが検出され変異がみられなかった。4遺伝子座のほとんどの遺伝子頻度に種間で差がみられた。これらのバンドパターンや遺伝子頻度の差は種の同定に役立つと考えられる。また種内の地域による遺伝子頻度の差はアコヤガイで他の2種よりやや大きかった。