著者
杜多 哲 杉山 元彦 本城 凡夫 大和田 紘一 浅川 明彦 田中 信彦 佐古 浩 北村 章二 淡路 雅彦 飯倉 敏弘 熊田 弘 山本 茂也
出版者
水産庁養殖研究所
雑誌
養殖研究所研究報告 (ISSN:03895858)
巻号頁・発行日
no.18, pp.p13-29, 1990
被引用文献数
2

五ケ所湾において1984年から1989年の塩分の測定結果を用いて,ボックスモデルを用いた解析を行い次のことを明らかにした。(1)五ケ所湾内を1ボックスとした場合,滞留時間は多くの場合2~7日であり,平均は1984年から1985年で4.7日,1986年から1989年で3.3日であった。輸送係数は2月から4月にかけて最大値を,11月から1月にかけて最小値をとる傾向がみられた。(2)五ケ所湾に適用したボックスモデルで得られる輸送係数の精度は,5割の誤差範囲におさまるが湾口部(ボックス1)と中間部(ボックス2)の塩分差が0.05‰より小さくなると,誤差が大きくなる。従って海水交換が良く,塩分差の小さい時期にはより適切な観測点配置と,より精度の良い観測を行う必要がある。(3)五ケ所湾の支湾の1つである迫間浦は,他の支湾に比べ海水交換が著しく悪い。その原因の1つとしては,流域面積が小さいため流入する河川水が少なく密度流が他の支湾に比べ生じにくいこと,冬季の季節風によって生じる吹送流が,地形的な原因で海水交換に結びつかないことが考えられる。
著者
和田 克彦
出版者
水産庁養殖研究所
雑誌
養殖研究所研究報告 (ISSN:03895858)
巻号頁・発行日
no.3, pp.p1-10, 1982

南西諸島(奄美大島,沖縄島,西表島)の4地点から採集したアコヤガイ属の三種,アコヤガイPinctada fucata,モスソアコヤガイP. albinaおよびミドリアオリガイP. macultaの種内および種間の遺伝的変異を電気泳動法で調べた。すなわちデンプンゲル法によりロイシンアミノペプチダーゼ(LAP),テトラゾリウムオキシダーゼ(TO)および筋肉蛋白(MP)のバンドを支配する計4遺伝子座にある遺伝子の頻度などを比較した。LAPバンドを支配する2遺伝子座(Lap1,Lap2)には,前者で6個(アコヤガイ)および7個(ミドリアオリガイ)の遺伝子がみられ,後者では4個(アコヤガイおよびモスソアコヤガイ)および6個(ミドリアオリガイ)の遺伝子の存在が推定された。TOのバンドはダイマー型パターンを示し1遺伝子座(To)にある4遺伝子に支配されると考えられた。MPの2つのゾーンのうち陽極側のバンドについてはアコヤガイとミドリアオリガイでMp遺伝子座にある2つの遺伝子が推定され,モスソアコヤガイではそれらと泳動度の異なる一本のバンドのみが検出され変異がみられなかった。4遺伝子座のほとんどの遺伝子頻度に種間で差がみられた。これらのバンドパターンや遺伝子頻度の差は種の同定に役立つと考えられる。また種内の地域による遺伝子頻度の差はアコヤガイで他の2種よりやや大きかった。
著者
淡路 雅彦
出版者
水産庁養殖研究所
雑誌
養殖研究所研究報告 (ISSN:03895858)
巻号頁・発行日
no.15, pp.p19-27, 1989

クルマエビ中腸腺初代培養に混入し,継代培養されてきた鞭毛菌類をクローニングした。得られた1クローンの遊走子は体側面にほぼ等長の2本の鞭毛を有し,その1本は羽型であった。この形質から,分離されたクローンは卵菌綱に属することが示された。遊走子は培養液中で遊泳した後,鞭毛を失い直径約3μmの球状の栄養体となり,次第に径を増し直径15から20μmの多核体となった。多核体の細胞質内には管状クリステを有するミトコンドリア,ゴルジ体,2種の顆粒や粗面小胞体が観察された。また多核体が運動性の小さい小栄養体に分裂することが顕微鏡映画および電子顕微鏡像で確認された。これらの性状から本菌はthraustochytridsに属する菌と考えられた。本菌の初代培養への混入経路について考察した。
著者
岡内 正典 河村 功一 水上 譲
出版者
水産庁養殖研究所
雑誌
養殖研究所研究報告 (ISSN:03895858)
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-11, 1997

キートセロスChaetoceros gracilisはクルマエビ類幼生の餌料として広く利用されているが,屋外での安定した大量培養は困難である。そこで,屋外での大量培養が比較的容易なイソクリシス(タヒチ株) Isochrysis sp. を餌料として利用することを目的に,ヨシエビMetapenaeus ensis幼生への餌料価値を調べた。飼育試験及び含有高度不飽和脂肪酸組成から,タヒチ株の餌料価値はキートセロスに比べて劣るが,キートセロスとタヒチ株の併用給餌により幼生の成長及び生残率は,各藻類を単独に給餌した場合と比べ,向上することがわかった。また,タヒチ株は屋外培養が容易であることも確認できた。タヒチ株を併用することにより,キートセロスの給餌量を約1/2に軽減することができ,クルマエビ類種苗への安定した給餌が可能になると期待される。