著者
和田 結希
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.115-145, 2019 (Released:2019-10-07)

国際教養大学専門職大学院日本語教育実践領域で秋から春にかけて実施される3つの異なる教育実習では,具体的なコミュニケーション場面における実践的な口頭運用能力の向上を目標とした日本語の指導が奨励されている。本稿では「発話につながるわかりやすい授業とは何か」という問いに答えるため,これらの実習を通じて筆者が行ってきた教育実践を「認知的複雑さ」という観点から振り返る。筆者は秋と冬に行った2つの実習から得た気づきを基に,最後の実習では「一般的にわかりやすい授業=認知的に単純な授業」と仮定し,認知的複雑さを調節する指標を作成した後,教案作成を行った。実習後,そうした取り組みが本当に認知的に単純な授業になっていたのか,また実際に学習者の発話量に差は見られたのか学習者からのフィードバックやビデオ等を資料として検証した。その結果,学習者にとってわかりにくく話しにくい授業があったことが判明し,そのわかりにくさ・話しにくさが活動に必要な手順の不明瞭性や先行知識の不十分な提供に起因することが明らかになった。