著者
荒川 秀俊 唐沢 浩二 佐野 佳弘
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.497-509, 2016-09-05 (Released:2016-10-08)
参考文献数
28

医療現場におけるDNA分析法は,診療所やベットサイドでの利用(Point of care test; POCT)を考慮し,コンパクトであることや簡易性,迅速性,感度に優れていることが必要である.そこで著者らは,迅速,簡易かつ高感度な検出法として,生物発光法を用いたDNA分析法を開発した.ここで用いる生物発光は,ホタル由来のルシフェリン-ルシフェラーゼ反応である.本生物発光は,ルシフェラーゼの存在下,ルシフェリンが酸素により酸化され,生じたオキシルシフェリンが励起状態を生成し,基底状態に戻る際に発光すると考えられている.この反応はきわめて高感度で,応答が速く,特異性に優れているなどの特徴を有する.さらに検出器は光源を必要としないため,測定器を小型化することができる.本稿では,この生物発光法を用いてDNAを迅速に検出するために,polymerase chain reaction(PCR)や一塩基伸長反応の際に副生成されるピロリン酸の高感度分析法を開発し,その応用として歯科領域で有用とされる齲蝕細菌遺伝子の分析,がん遺伝子であるK-ras及びp53遺伝子の一塩基多型(SNPs)解析法,さらに腫瘍マーカーとしてのテロメラーゼ活性測定法の開発について,著者らの研究を中心に概説する.