著者
松井 亨 喜屋武 茜 庄司 光男 重田 育照
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.184-191, 2016 (Released:2016-12-27)
参考文献数
37
被引用文献数
1 2

本総説では,分極誘電体モデルと量子化学計算に基づく酸解離定数(pKa)の計算手法について述べる.この手法では,参照分子に対して計算により得られる自由エネルギー差と実験により得られるpKa値から官能基毎の線形関係を導くことで,アミノ酸の側鎖のpKaの半定量的な計算が可能になる.ペプチド3量体の計算においては,周囲のアミノ酸の水素結合の効果によってpKaが単量体とくらべ大きく(3 pKa単位)異なることがわかる.また本手法は標準水素電極電位の計算にも適用可能であり,いくつかの酸化還元反応の誤差はCCSD (T)/aug-cc-pVDZでは0.1V以内であり,B3LYPでも同程度の精度で酸化還元電位が計算される.