著者
澤岻 哲也 嘉手苅 佳太 新崎 千江美 田場 聡
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.119-123, 2014
被引用文献数
7

我が国のマンゴー(Mangifera indica L.)は沖縄県,鹿児島県および宮崎県などの西南暖地を中心に栽培が盛んに行われているが,果実の流通過程においてマンゴー炭疽病の発病が深刻な問題となっている。本病は輸送中の果実に黒色円状の病斑が発症,進行するため,経済的損失だけでなく市場や消費者の信頼,さらには産地ブランドの評価にも大きく影響を与える。そのため,生育期の圃場における防除対策が急務となっている。マンゴー炭疽病は,Colletotrichum gloeosporioides (Penzig) Penzig and Saccardo(岸,1998)およびC. acutatum J. H. Simmonds(田場ら,2004)の2種の糸状菌によって引き起こされ,特にC. gloeosporioidesは圃場での優占種であることが明らかとなっている(澤岻ら,2012)。沖縄県の施設マンゴーにおける一般的な炭疽病対策は,出蕾期の1月以降から収穫期の7月まで,ビニール被覆による雨よけと併せて薬剤防除が行われている。とくに着果期から袋かけ直前までの主要散布剤として,残効性に優れ,果実の汚れが少ないストロビルリン系薬剤(以下,QoI剤)であるアゾキシストロビン剤やクレソキシムメチル剤の散布が普及,定着しつつある。しかし,佐賀県(稲田ら,2008),奈良県(平山ら,2008)および茨城県(菊地ら,2010)においてQoI剤耐性イチゴ炭疽病菌が既に確認されており,防除暦における散布回数の削減を余犠なくされている。2010年4月現在,沖縄県におけるマンゴー炭疽病菌では本剤に対する防除効果の低下事例ならびに耐性菌の発生は確認されておらず,その実態については不明である。