著者
国府 肇
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.140-154, 1987

非発作時の気管支喘息患児にアストグラフを用いてメサコリン吸入テストを行った際, 誘発されているにかかわらず呼吸抵抗(Rrs)曲線が下降する現象を17%の症例に認めた.この原因を追求するため, Rrsの構成要素である口腔内圧(P)と気流速度(V)の両波について解析したところ, Rrs下降群では負荷後両波の位相差が大であったため, Pは小さな値をとり, ΔPao/ΔVmax=Rrsは小となることによると思われた.また一方P-Vリサージュの解析からは, Rrs下降群ではメサコリン吸入後のリサージュ傾斜角が大であったが, 吸入前の傾斜角もすでに高値をとっていた.これは患児の吸入前の%FEV_1が44.3%と低値で, また吸入前Rrsが4.8cmH_2O/secと高値であったことと一致していた.以上のことより, 無発作にあると思われていてもかなりの気道収縮状態にある患児に負荷をかけた場合に, PとV間の大きな位相差がさらに大きくなり, そのことがRrs下降の一因と考えられた.生体側における他の種々の要因, 例えば披検児の呼吸パターン, 胸廓, 末梢気道閉塞およびair trappingの有無などは, Rrs下降現象との間に一定の関係を見いだせず, これらの関与は少ないものと考えられた.