著者
國分 真佐代 大石 恵美子 Masayo KOKUBU Emiko OHISHI 聖隷クリストファー大学看護短期大学部専攻科助産学特別専攻 聖隷クリストファー大学看護短期大学部専攻科助産学特別専攻
出版者
聖隷クリストファー大学看護短期大学部
雑誌
紀要 (ISSN:13483900)
巻号頁・発行日
no.27, pp.33-41, 2004
被引用文献数
1

本研究は、助言された産育に関する慣習の実行程度とその理由との関連を明らかにするために産後4ヶ月の母親14人に倫理的配慮を行った上で聞き取り調査を行った。その結果、母親が受けた慣習の総助言数は175件で、その内訳は実行群155件、形だけ実行群3件、不実行群17件、慣習内容は食事・日常生活行動・儀礼の順に多かった。実行した慣習は、子どもの健康や妊娠・分娩への影響についての科学的根拠や謂れを伴うものが多かった。ただし、謂れが不明でも実行していた「忌」の行為や、嫁の立場を優先して形だけ実行した「帯祝い」・「オデンギョウ」など慣習の謂れが明確であれば慣習を肯定して実行する可能性を含むものもあった。このため、看護師は母親が慣習の科学的根拠や謂れを知ることによって自分の産育慣習についてのより具体的な考えを持つことや、母親の自己決定を見守り支えられるような関わりができることが重要であると思われた。
著者
國分 真佐代
出版者
聖隷クリストファー大学看護短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、昨年度行った14組の両親の面接内容を夫婦別々に郵送して本人に確認してもらい、逐語録を作成し質的に分析した。その結果、母親達は、死産という"最悪事態の発生"にショックを受けたが、自分が所有している将来の妊娠の可能性などに気づくことにより悲しみから踏み出すことが多かった。次の妊娠では、"再発への怖れ"を抱き、得られなかった子どもの存在や母親役割を取り戻そうとする"代替への試み"の中で、"死産児(の死)を認め"、独自の人格を有する子どもとして"次回児を受入れる"という"次回児へのマザリング"に取組み、出産後には次回児との新たな母子関係を築いていた。しかし、次回児に死産児の生まれ変わりを願った母親は、出産後1年以上も死産児との区別ができなかった。一方、父親達は、死産にショックを受けたが、葬儀等の社会的な役割を果たすことに専念して悲しみを表現することが少なかった。死産後には、葬儀に立ち会うことにより"死産児(の死)を認め"て悲しみから踏み出すことが多く、死産児の生まれ変わりを願うことはなかった。次の妊娠では、"再発への怖れ"を抱いて母子を守るために"妻への気遣い"を行い、死産児とは異なる独自の人格を有する子どもとして"次回児を受入れ"て"次回児へのファザリング"に取組み、出産後には次回児との新たな父子関係を築いていた。死産後から次の妊娠・出産時の看護について両親が肯定的に受止めたのは、死産後に1人の子どもとして死産児に接してくれたことと、死産後からの継続的な関わりを受けたことであった。求めたい看護は、母親は次回児の妊娠から産後に不要な質問を受けないための医療者側の情報伝達の連携で、父親は死産後のプライバシー確保や精神的ケアであり、産後の悲嘆から鬱状態と出社拒否となり自ら心療内科の受診や社内配属異動をした父親は自分への看護も望んでいた。