著者
國吉 初美
出版者
一般社団法人大学英語教育学会
雑誌
JACET全国大会要綱
巻号頁・発行日
vol.41, pp.256-257, 2002-09-05

神奈川大学外国語学部スペイン語学科において、この授業手順は実施された。学年は1年生、学生数は51名、科目名は「英語(理解)I」だった。学生は、中学と高校で6年間の英語教育を受けてきており、外国語学部のスペイン語学科を選び入試を受かってきた者たちで、言語に対するセンスを持ち、私学特有の気持ちのゆとりを持っている。基本的な英語学力には問題はほとんどなく、欠けている事は大量の英文を楽しみながら読む経験と、英文の伝えるメッセージを受け止める経験、及び大量のリスニングの経験だろうと思われる。本手順ではオックスフォード大学出版局から出されているBookworms Libraryというgraded readersのレベル3にあたる"Skyjack!"をテキストとして半期完結で行われた。レベル3の語彙数は1000語となっている。学生はこの範囲の英語の語彙を、物語の文脈の中で、大量の背景知識と共に、楽しみながら身につける事ができる。1000語と言っても、文部科学省認定の、中学校の教科書に出てくるような、平凡な単語ばかりではない。例えば、binoculars(双眼鏡), grenade(手榴弾)と言った、物語にそくした、珍しい単語も時々あらわれて、目新しい。この手順の目的は、1つに学生達に多読をさせる事であり、1つに一々英和辞典に頼らずに読むよう習慣づけることであり、1つに学生達が楽しんで英文を読むようにしむける事である。教室では、学生達は、(1)「スカイジャック!」を読み通し、(2)イギリス人の、訓練を受けた声優が、それを朗読したカセットテープを何度か聞き、また、(3)本の中に含まれる、日常でも使えそうな単語や珍しい単語については、特別に抜き出して覚える事などの活動をした。このコースの最後のクラスでは、今度は映像に伴われた音声英語を楽しむ目的で、イギリスの小さな街を舞台とした映画の「ノッティングヒルの恋人たち」を視聴した。本発表では、この(1)すぐに英和辞典に頼らず、(2)楽しみながら多読をする事で、(3)生きた英語との接触をねらう授業手順の詳細をご紹介したい。それぞれの活動の時間の割り振りは円グラフにて示し、教室内で特に学習された単語群、アンケートで得た一冊の本を読み通したあとの学生達の反応はハンドアウトで示す。期末試験で実施した、授業で取り扱った単語のテストの結果もグラフにて示したい。