著者
園田 康博
出版者
認知症治療研究会
雑誌
認知症治療研究会会誌 (ISSN:21892806)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.3-19, 2021 (Released:2021-02-15)
参考文献数
18

認知症診療を専門に多くの認知症の方々を診ていると,base に発達障害を持っている方々が多くいることに気づかされる.また,その家族にも同様の傾向の方々が多くみられることにも気づく.昨今,この認知症と発達障害との関係に目を向ける報告例も散見されるようになってきている.発達障害の専門書を紐解くと「レビー小体型認知症の診断基準」にも入っている“抗精神薬にたいする過敏性”の指摘が多くみられる.これは,総じて認知症の治療の考え方に大きく通ずるものと考えられ,認知症と発達障害の治療は共通点が多い.また,パーキンソニズムは自閉症スペクトラムにおける症状の“三つ組の障害”の一つ,“ノンバーバルの異常”と同義語といえる.この点を踏まえて,パーキンソニズムのある認知症との鑑別には画像診断(MIBG 心筋シンチグラフィー,DAT スキャン,脳血流シンチグラフィー,頭部MRI)が重要であることを指摘しておきたい.発達障害は一つの疾患単位の場合だけではなく,強弱の程度はあれ複数の疾患がオーバラップして発症していることも多いということも注意が必要である.認知症診療において発達障害に関する知識は,これからはなくてはならない不可欠なものとなっているといっても過言ではない.