著者
山口 祐樹 上野 琢也 園田 竜平 松田 憲亮
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0117, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】足関節内反捻挫はスポーツ外傷の中で最も発生頻度の高い外傷であり,水中での競技以外ほとんど全ての競技で頻繁に見られる。また,既往回数の違いにおける足部の機能障害との関連性の研究は少ない。本研究では,足関節内反捻挫の既往回数と機能障害の関連性および評価項目について検討を行うことを目的とした。【方法】対象者は,健常大学生男性36名,72足(年齢21.4±1.1歳,身長:173.2±5.3cm,体重:67.0±9.5kg)とした。対象者には研究内容を口頭で説明し同意を得た。また,本研究は国際医療福祉大学倫理委員会の承認を得て実施した。問診より,①捻挫複数回群43足,②捻挫一回群11足,③捻挫未経験群17足の3群とした。問診は捻挫既往,回数,受傷後の対応,診断名,損傷部位,重症度,慢性足関節不安定性(CAI)の評価,スポーツ歴,利き足,身長,体重,その他既往の11項目で実施した。計測は,足関節アライメント,関節可動域測定(以下:ROM測定),Finger of 8 hop test(F8),Side hop test,筋力測定,下肢長測定,タイトネステストの7項目を実施した。筋力測定ではμ-tasF1(アニマ株式会社製:ハンドルダイナモメーター),下肢長測定の際にはメジャーを用いて測定を行った。統計は一元配置分散分析を用い,その後tukey法による多重比較検定を行った。有意水準はp<0.05とした。また,評価項目と捻挫回数との関連性の検討をPearsonの相関係数を用いて行った。【結果】足関節捻挫回数と評価項目の相関性は,足関節底屈(膝屈曲)ROM(-0.39),足関節底屈(膝伸展)ROM(-0.32),足部外転(-0.43),股関節外転筋力(-0.3),F8(0.34)であった。また足関節内反捻挫1回群と複数回群で有意差を認めた項目は足関節底屈(膝屈曲)ROM,足関節底屈(膝伸展)ROM,足部外転であった。また内反捻捻挫未経験群と複数回群との間で有意差がみられた評価項目は股関節外転筋力,F8であった。【考察】本研究では足関節内反捻挫の既往回数と関連性を示した評価項目は足関節底屈(R=-0.39)および外転可動域(R=-0.43)であった。またこれらの評価項目では足関節内反捻挫1回群と複数回群の間で有意に低下する事がわかった。CAIを予防する視点からこれらの可動性を観察する事の重要性があると考える。内反捻挫回数が増加することにより足関節底屈可動域が低下する原因として,内反を制御する靭帯の損傷により,その周囲に炎症が起こること,二次的に周囲の軟部組織の伸張性が低下する1)事が挙げられる。一方,足関節外転における可動域制限については,上述の足関節底屈可動域制限が関連すると考えられる。捻挫足では背屈運動時に外転方向へ誘導されることがわかっている2)。このため,内反捻挫複数回群と1回群では外転可動域の測定肢位(底背屈角度)が異なっている可能性がある。この理由から内反捻挫複数回群で足部外転の可動性が有意に増加したと考えられた。先行研究3)では荷重位での背屈角度,レッグヒールアライメント,底屈内反角度などの評価項目で内反捻挫1回群と複数回群で有意差を認めている。対象者数や測定方法も含めて詳細に検討し,今後の課題としたい。【理学療法学研究としての意義】慢性足関節不安定症の評価項目としての有用性を見出す。