著者
土井 貴之
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-6, 2023 (Released:2023-11-10)
参考文献数
16

本稿の目的は,明治期の醸造(酒造)簿記書の考察から,三位一体酒造業体制のもとでは酒造技術や雇用情報だけでなく複式簿記の知識も共有されていたことを指摘し,当時の複式簿記による酒造経営と酒税の管理方法を明らかにすることにある。近代期の酒造業は主要産業のひとつで,酒造業固有の帳簿記録により酒税を納め,日本の財政を支えていた。文献史研究として当時の酒造業向けの簿記書を分析し,酒造経営の内容,その記録と管理方法,酒造業界と取り巻く社会的・経済的な背景について考察する。また,複式簿記による記録が経営者や杜氏だけでなく税務署員にも活用され,酒造経営と酒税の管理に貢献していた可能性についても言及する。